礼拝の話

2020/04/09 

4月8日(水)2020年度 始業礼拝 聖書 創世記 2勝4~7節 校長 小西 二巳夫

「象は忘れない」というイギリスのことわざがあります。

象は記憶力がよく、自分の身に起こったことは忘れないそうです。

このことわざが作られた目的は人間を戒めるためです。

象とは違い、大切なことをすぐに忘れるのが人間です。

しかも、人間の忘れるは、本当に忘れる、ということではない場合が多いのです。

たとえば、考えないようにする、自分に関係ないという態度を取る、見て見ぬふりをする、過去のことにしてしまう、ことです。

そして、最悪なのが「なかったことにする」ことです。

今、そういう意味の「忘れる」を真剣に考えることが求められています。

新型コロナウイルス感染症問題です。

当初、中国のある町での出来事と考えていたところから2ヵ月もしないうちに世界中を、自分たちの生活を、脅かす問題になるとは考えもしませんでした。

感染症で亡くなるだけではなく、経済的な問題で生活ができない人、生きていけなくなる人が急増しています。

学校、清和でいうと、休校によって授業などの学ぶ機会がどんどん奪われています。

こんなことは初めてだとよく言われますが、感染症問題によって世界と一人ひとりの生活が一変するのは珍しいことではなく、歴史的に見ても何度も起こっています。

カミユという作家の小説に「ペスト」があります。

ペストに見舞われたアルジェリアのオラン市という町を描いていますが、この作品の重要なテーマが「忘れる」「忘れない」ことです。

新型コロナウイルスの感染が急激に広がった大きな原因に「忘れる」があります。

自分には関係ないと考えて、注意を聞こうとしなかった人、軽症で済むと身勝手に受け止める人、そのうち終息すると軽く考える人が多くいるからです。

新型コロナウイルス問題が教えてくれるのは、自分に起こったことを決して忘れないで記憶するのが象の特徴ならば、自分に起こったことをすぐに忘れてしまう、他人事にする、そしてなかったことにするのが、人間の特徴だということです。

小説「ペスト」は様々な意味の「忘れる」がもつ愚かさと罪深さを描いているのです。

そして「忘れる」という行為を神という立場から厳しく追及しているのが聖書です。

今朝の聖書の箇所、創世記を読む時に大切なのはこの話を通して、何を伝えようとしているかを考えることです。

聖書はここで、人間がたいしたことはない弱い存在であることを忘れるなと言います。

誰かの力や支えなしに生きていけない、それを忘れてはいけないと呼びかけています。

創世記が描いている時代の人々は、お互いが助け合わなければ生きていけない厳しい難民生活から、安定した豊かな定住生活ができるようになっていきました。

その中で、人々は自分の中にある弱さや欠けた部分を見ようとしなくなり、自分中心の生活、自分が一番であるかのような生活になり、さらに自分より弱い人間を見下し、存在しないかのような態度になっていきました。

それでは結局誰も幸せになれないということです。

創世記2章の話は、それを忘れないためのメッセージになっています。

更に聖書は、人間として忘れてはいけないことを忘れることを「罪」と呼びます。

この「罪」は一般的な犯罪のことではなく、人間としてするべきことをしない、そのことを指します。

弱さや弱い存在を忘れてしまうことです。

今私たちが忘れては行けないことの1つに、この時も感染症によって、命が奪われそうな人のために、自分の命をかけて働いている人たちがいることです。

医療従事者や行政の人たちが必死に支えているのを忘れないことです。

その人たちが発する言葉や要望を聞き流さないことです。

「象は忘れない」との言葉をしっかり心に刻みながら生きることです。

今日から始まる清和の1年間、私たちが忘れてはいけないのは、まさに「忘れない」という言葉そのものです。

清和で学び、働く者として、聖書の問いかけにしっかり応えていく、そのことを忘れることなく過ごしていきましょう。

 

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