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2020/10/26 

学園報10月号 巻頭言

清和は 「鳴かぬなら 〇〇しよう ホトトギス 」の学校です

ヨシタケシンスケさんの絵本「それしかないわけないでしょう」

絵本作家ヨシタケシンスケさんの作品に「それしかないわけないでしょう」があります。小さな女の子が窓の外をにらみながらいいました。「おとうさんは きょうは はれるって いってたけど、…おとなのいうことは けっこう はずれるな」。この場合のおとなにはお母さんや近所の人、学校の先生なども入ります。さらにテレビや新聞などに登場する政治家や専門家なども含みます。がっかりしている女の子に、学校から帰ってきたお兄ちゃんが追い打ちをかけるようにいいました。「ねえねえ、しってる? みらいはたいへんなんだぜ。ぼくたちが おとなになるころは たいへんなことしか ないんだってさ」。お兄ちゃんは食べ物がなくなり、病気が流行り、戦争が起こり、地球がこわれたりする未来がやってくると、友だちがおとなから聞いた話をしたのです。女の子はお兄ちゃんの話に不安で泣きたくなりました。

俳句 「鳴かぬなら ○○しよう ホトトギス」

確かにおとなの悪いクセに人間と物事について決めつけて、それも悲観的にいうことがあります。そこにはしっかり成長して負けない人になってほしいとのアドバイスや願いも込められています。でも、聞かされる方の子どもはたまったものではありません。学校や教育も、悲観的に決めつけていわれることがよくあります。ある教育評論家が現状の学校とそこで学ぶ子どもたちへの対応を、戦国時代の3人の武将を表す俳句によって説明しました。今の学校は「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス(徳川家康)」のように待つことをしない。むしろ「鳴かぬなら 鳴かせてみよう ホトトギス(豊臣秀吉)」と、強制的に学校の思いで学習や生活をさせることをよしとしている。それによって「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス(織田信長)」と、急がせることで子どもたちの個性ややる気を奪うことをしている。いかがなものか……。私が聞きたかったのは、「だからどうなの、どうすればいいの」という、それから先のことでした。しかし話はそこまででした。私は「それしかないわけないでしょう」の女の子のように、情けなくて泣きたい気分になりました。

未来をひらいてくれるおばあちゃんの一言

おとなのいうことが外れることにがっかりして、さらにお兄ちゃんの話に不安で泣きたくなった女の子に、おばあちゃんが言ったのです。「だ~いじょうぶだよ。みらいがどうなるかなんて、だれにもわかんないんだから!(中略)おとなはすぐに『みらいはきっとこうなる』とか、『だからこうするしかない』とかいうの。でもたいていあたらないのよ。」おばあちゃんはこの言葉でおとなを否定したのではなく、それを参考に自分で考えることが大事と教えてくれたのです。そこで女の子は自分の未来を自分で思い描きました。するといろいろな未来が見えてきて楽しくなりました。「いちにちじゅう パジャマでも いいみらい。まいしゅうどようびは クリスマスのみらい。じぶんのへやが スイッチひとつで むじゅうりょくになる みらい。」

清和の「それしかありません」はこの絵本のタイトと重なります

私も女の子にならって清和の今とこれからについて考えてみました。そこであらためて気づかされたのは、学校とそこで学ぶ生徒をパターン化して考え当てはめても、希望や喜びは生まれてこないということでした。清和は待つことを大切にできる学校です。「一人ひとりを大切にする」との言葉でもって、その人の存在や人格、個性を受けいれることのできる学校です。同時に、事柄によっては厳しく生徒に向き合う学校です。でもそれはごくふつうのことです。そこでホトトギスの3パターン以外の受けとめ方を考えてみました。するといくつも出てきました。「鳴かぬなら 一緒に鳴こう ホトトギス」……。

清和がこうした姿勢で生徒を受け止めるのには根拠があります。それは、イエス・キリストが同じように私たち人間を受け止めたということです。イエス・キリストは、過ちや失敗をおかす人間を受け止め、十字架にかかることで代わりに罪を負ってくださいました。このことがキリスト教の出発点です。イエス・キリストを俳句にするとこうなります。「鳴けぬなら 代わりに鳴こう ホトトギス」このイエス・キリストに励まされて、清和は生徒をまっすぐに受け止める教育に励むことができるのです。

清和がこれまで取り続けてきた教育の姿勢は、結果を最優先することではありません。答えをパッと見つけるのではなく、じっくり考えることのできる人を育てることです。清和にはそれしかありません。この「それしかありません」は、絵本『それしかないわけないでしょう』の多様性と自分の考えを持つことに応える「それしかありません」です。これからも、そうした学校であり続けたいと願っています。

 

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