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2020/12/16 

学園報12月号 巻頭言

「大人の時間」「子どもの時間」そして「清和の時間」

小冊子『先生イラスト集』

 しばらく前から私の机には『先生イラスト集』という小冊子が置かれています。2階ホールの奥にはそれを拡大してパネルにしたものが飾られています。『先生イラスト集』は中学2年生の一人が、放課後に、スマホのアプリを駆使して教員を描いたものです。表紙の人物は私のようです。両手を上にあげた姿の横の吹き出しは「アーメン」です。これは、入学礼拝などの最後に祝祷というお祈りをする時のスタイルです。着ている服は、金ボタンのジャケットにストライプのネクタイと、私のふだん着ているものです。しっかり見られています。ページをめくると次々に特徴をとらえた教員が登場します。ある英語の教師の吹き出しは「キティしか勝たん」です。キティちゃんが大好きな教師です。キティちゃんには弱いけれど、他には負けない最強の先生と表現しているのだと解釈しました。クラス担任の頭の左側には王冠がついています。自分たちにやさしく接してくれているという意味でしょう。しかし、頭の右側はブチっと切れてツノが出ています。やさしさと厳しさの両方で自分たちを受けとめてくれていることを、両手を広げるポーズで強調しています。どの教師も特徴がデフォルメされていて、おもわず「そうそう」と言いたくなります。教師へのリスペクトも十分感じられます。

そんな暇あったら、もっと勉強したら…

『先生イラスト集』から思い出したことがあります。清和に来る前に働いていた高校でのことです。この時期、個人的な学校見学に来られる人たちがたくさんいました。その中の一人に、パソコンでデザイン画を描くのが好きな中3の男の子がいました。彼はある時、1つのアイデアを形にしました。同じ学年の生徒約100名の顔と特徴をパソコンで描き、校舎や体育館、そしてグラウンド等に配置したポスターを作ったのです。それを友だちに見せている時のことです。通りかかったクラス担任が一言いいました。「こんな暇があったら、もっと勉強しなさい……。そうでないと、ろくな高校に行けないぞ」。その生徒は次の日から学校に足が向かなくなりました。クラス担任は高校受験を前に、時間を大切にしなさいと励ますつもりだったのでしょう。でもそうは伝わらなかったのです。清和の教師がその場面に出会ったら、どんな声をかけるでしょうか。「すごいな、どうやって描いたの」「私はどこ? 私も描いてよ」。

時間の速さは年齢に反比例する

 時間を大切にしてほしいということでは、清和の教師も叱った先生も気持ちは同じです。違うとすれば、それは大切にしてほしい時間そのものが違うのです。
 フランスのある哲学者は、時間には「大人の時間」と「子どもの時間」があると考えました。この人によると、時間の速さが年齢によって反比例するというのです。
 15歳の生徒と68歳の私の時間の過ぎ方を反比例させると、私の時間は15歳の約5倍速く過ぎていることになります。逆に、15歳の時間は私の5分の1の速さでゆっくり流れているのです。そうすると納得できることがあります。それは大人や先生の「早くしなさい」や「ダラダラするな」という口癖の根拠です。中高生からすると、ふつうにしているのに、大人や先生からはグズグズしているように見えるのです。「早くしなさい」という声掛けは、成長を願う大人や先生からの励ましです。しかし、言われた方は自分を否定されたと受けとめることも多いのです。

なぜ幸せな時間を幸せと感じられないのでしょうか

 「大人の時間」と「子どもの時間」の対比から気づかされることがあります。私より時間が5分の1倍速でゆっくり流れているとしたら、それは約5倍もあれこれ体験ができることです。そういう意味で中学高校時代は幸せな時間なのです。にもかかわらず、そう感じないとしたら、それは勉強だけを約5倍させられているからかもしれません。勉強だけを何倍もさせられたのでは、学ぶことが好きになるはずがありません。興味のあることをあれもこれもやってみようという気にはなりません。多くの大人や先生は、早くしなさいなどの言葉で中高生を「大人の時間」に押し込めているのかもしれません。清和は時間がゆっくり流れていると言われます。それを別の言葉にすると「子どもの時間」を大切にしているとなります。『先生のイラスト集』を作ってくれた生徒は、「子どもの時間」を大切にされる中で、周りの人の心を温かくする作品を創造的に作り出すことができたのだと思います。「子どもの時間」が大切にされるとは、安心して学べる、安心して学校生活が過ごせるということです。清和はこれからも「子どもの時間」を大切にしていきます。

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