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2023/02/14 

学園報SEIWA 2月号を発行しました

清和は「たゆたえども沈まず」の心意気を持った人を育てる学校です

地元愛に満ちた放送局が映画を作りました

 今から11年前の3月11日のことです。その日の午後、私は校長をしていた新潟の高校で中学3年生と保護者の面接をしていました。教室が突然揺れ始めました。大きな地震が起きたと直感しました。それは震度7の揺れと津波によって大きな被害をもたらし、後に東日本大震災と呼ばれることになった大地震でした。私の働いていた高校は福島第一原発から直線で200㎞しか離れていません。原発事故の深刻な状況に、学校を存続させられないと心が大きく揺れました。直接被害を受けた人たちの心の揺れは、私のそれと比べようもない程大きなものです。大地震に遭った人たちの悲しみの一つは、自分たちの存在が忘れられることだと言います。そうした当事者の心の揺れに寄り添う映画が去年上映されました。テレビ岩手制作の東日本大震災のドキュメンタリー映画です。大震災から10年以上経った今、地域の復興と生活の再建は進んだように見えます。けれどこの映画は大震災によって生活が一変させられた人たちが、今でも大きな揺れの中で生きていることを教えてくれます。映画のタイトルは『たゆたえども沈まず』です。

フランス・パリの紋章に刻まれた「たゆたえども沈まず」

 「たゆたえども沈まず」という言葉を聞いて、ピンとくる人は少ないようです。漢字にすると「揺蕩(たゆた)う」です。意味は「ゆらゆらと揺れ動いて定まらないこと」とあります。「たゆたえども沈まず」と日本語に訳せるラテン語がフランスのパリの紋章に刻まれています。パリは「花の都」や「パリの空の下セーヌは流れる」などのフレーズによって、多くの人が憧れる街です。けれどセーヌ川の氾濫によって、街が洪水の中に沈む大災害を繰り返し体験してきました。その度にそこに住む人たちは絶望することなく、「たゆたえども沈まず」の心意気を持って、より美しい街を造ろうとしてきたのです。テレビ岩手が映画のタイトルに『たゆたえども沈まず』と付けたのは、この言葉によって素晴らしい街を造っていった先人がいることを知らせ、希望を持って生きてほしいと願ったからでしょう。

聖書にも「たゆたえども沈まず」が出てきます

 聖書にも洪水の話が出てきます。「ノアの箱舟・洪水」で知られている物語です。人間が自分勝手な行いをしているのを見た神が、人間を造ったことを後悔し洪水によって滅ぼすと決めたことから始まる話です。人間の身勝手さに腹を立てた神ですが、冷静になって見るとまっすぐに生きているノアという人がいることに気づきます。そこでノアの一家を救うために大きな箱舟を作らせます。大雨は40日続き高い山も沈むほどの大洪水になりました。箱舟は濁流の上を揺れ動きますが沈みませんでした。ノアの一家が地上に降り立ったのは1年後のことです。こうしたいきさつからノアの箱舟の話は、身勝手なことばかりしているとろくなことにならない、だから恥ずかしくない自分になるための教訓と捉えがちです。しかし洪水の後で神がノアにかけた言葉は意外なものでした。人間に変わることを求めるのはなく、神自らが変わると言われたのです。これからはどんな状況になっても、見捨てることなく寄りそっていくと言われたのです。そうすると「ノアの箱舟・洪水」は「たゆたえども沈まず」と人間を守り抜くとの神の心意気を伝え励ます話ということになります。

清和は「たゆたえども沈まず」の心意気で120年歩んできました

 清和の歴史は120年前から始まります。アメリカ人女性のアニー・ダウドは二人の貧しい少女と出会いました。ダウドがこの二人を前に願ったのは、生きる力を持った人になることでした。時代や社会という大きな波に飲み込まれ絶望するのではなく、希望をもって生きる人になるためには、しっかりとした生活を行い、そして学ぶ機会が必要だと考えました。そこで自分が少女たちに寄り添うことを決心したのです。その時のダウドに成算があったわけではありません。ただ、彼女は神自らが「たゆたえども沈まず」を行ってくれると信じたのです。神が自分に寄りそってくれると確信したのです。清和はそうして始まった学校です。ですから常に「揺蕩(たゆた)いながら」、つまり小さな船が大きな波に揺さぶられるように教育の歴史を刻んできました。しかしそれは負の歴史ではなく喜びの連続でもありました。その学校で3年間、6年間学び生活することで、間違いなく「たゆたえども沈ます」の心意気と自分の人生に希望を失わない人になっていけるのです。「たゆたえども沈まず」は清和の教育の心意気です。

「清和RUN」はマラソン大会ではありません

 昨年11月に「清和RUN」を開催しました。今回はその中から3人の体験を紹介させていただきます。
 清和RUNは「マラソン大会」を清和の教育の視点から問い直し、それを形にしたものです。子どもたちの中にそれまでの学校体験から、長い距離を走ることを、「させられるもの」「しんどいもの」「苦しいもの」、と受けとめがちな人たちが多くいます。加えて時代が便利になり、生きる根幹である「走る・歩く」ことを積極的にしなくなった子どもたちが急増しています。「走る・歩く」ことによって培われる「生きる力」を子どもたちから奪っているようにさえ感じます。
 清和は日々の学校生活を通して、学ぶ喜びと楽しさを知った人を育てることを大切にしてきました。学びは学校を卒業してからも一生続けていくものです。そのためには、学びが本質的にもつ喜びや楽しさを体感してもらうことが必要です。「走る・歩く」も本来は人間にとって喜びであり楽しみです。
 清和は、「走る・歩く」ことそのものが持つ喜びと、楽しみを知ってもらいたいと考えて清和RUNに取り組んでいます。

体育科 森田眞麻

 11月22日(火)、無事に清和RUN2022を開催し終えることができました。
天候が心配される中、なんとか持ちこたえた空模様。
出発前の生徒たちの様子はやはりどこか緊張していて、「先生、ちょっと不安です。」と、スタート前につぶやいた生徒もいました。
 私自身も、「大丈夫!」と励ましながらも、正直頭の片隅で全員が無事にゴールできるのかどうか、「心配」という文字が消えませんでした。
 しかし、そんな杞憂は、本当に取るに足りないものであったことは言うまでもありません。
 スタートのホイッスルが鳴るとともに、一人ひとりが、それぞれのペースで前に進みだしました。
 マラソンはどうしても、弱い自分の心が浮き彫りになる競技です。
 「苦しい」「つらい」「止まってしまいたい」
 そんな弱い自分の心に葛藤し、自分と戦い、荒い呼吸で懸命に取り組む生徒の姿が、そこにはありました。
 さらに、巡回しながら生徒たちを見守る中で、「あそこの電柱まで頑張ろうや!」「私らめっちゃ頑張っちゅうで!」「もうちょっと、頑張りましょう。いけます!」という声が。自分を鼓舞するのでも大変なはずなのに、隣の友人に、後輩に、先輩に、自分の辛さを吐き出すのではなく、励ます声が沢山聞こえてきました。
 自分が辛い時に相手に優しさを持つこと、自分ではなく相手の辛さを感じ取り、励ますこと。そこに生徒たちの底力を、確かに感じました。
 そんな生徒たちの熱が広がっていったのか、無事時間内に全員ゴールすることができました。
 世の中には走ることよりも辛く苦しいことが沢山あります。逃げ出してしまいたいと思うこともこの先何度もあることでしょう。しかし、清和RUNでの体験は、少なからず未来の自分の心を奮い立たせてくれるものになると信じています。
 最後の一人が向かうゴールで、溢れんばかりの声援を送る生徒たちや先生方の光景が、今でも目に焼き付いています。
 本当に、本当に、ナイスラン‼ナイスウォーク‼

高校2年生 感想

 練習では、体力がついていっているということを実感することができました。最初の頃は、歩く距離が長かったのですが、練習の後半になると20分間走り続けることができました。
本当に自分なのかと思うほど驚きました。練習は少しずつ距離が延びていき、目標の3周を達成できた時はとても嬉しかったです。2週間で心も身体も成長することができました。
本番は、練習の時よりも距離が延びて大変でした。しかし、今までだったら疲れてすぐに歩こうとしていたのに、2週間の練習で心も身体も強くなったおかげで、もう少し頑張ってみようと自分のペースで一生懸命頑張ることができたと思います。
今年の目標は、「昨年より速いタイムでゴールする」でしたが、昨年より遅くなってしまったと思います。だから、来年こそは今までのタイムを超えられるように日頃からもう少し運動をして頑張りたいと強く思いました。

高校1年生 感想

 私は高校から清和に入学したので、清和RUNへの参加は今年が初めてでした。
 2週間の朝練、体育の授業でのトレーニングはどれもとても大変でしたが、練習を終えた後にはいつも不思議と清々しい感覚がありました。大変だった分、とても楽しい2週間だったなと感じています。
 RUN当日は、6.8㎞という長い距離を、果たして私に完走できるのか、ちゃんと制限時間内に戻って来られるかという不安でいっぱいになっていました。でも、いざスタートから足を踏み出してみると、あの心地よい感覚がよみがえり、不安だった心はもうスタート前に置いてきてしまったみたいに、楽しく走り出すことができました。
 コースの途中では、歩いて、走って、また歩いて、もう一度走って……と大きな広い空の下で何度も何度も繰り返しました。そして、気が付けばゴールが目前に見えていました。
 無事に制限時間内にゴールすることができ、疲れでくたくたになりながら、それでもとても楽しくて爽快な80分だったなと思うことができました。

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