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2019/07/24 

校長のお話 7月

1学期終業礼拝 「天気の子」と「グスコーブドリの伝記」ローマの信徒への手紙11章33~36節(291)

アニメ映画「君の名は」で一躍有名になったのが新海誠監督です。
新海監督の新しい作品「天気の子」の上映が始まりました。
天気の子というタイトルからもわかりますが、お天気がストーリーに関わっています。
最近異常気象が異常ではなくふつうになってきました。
50年に1度といわれる集中豪雨が、1度ではなく、日本のあちこちで次々に起こっているからです。
異常気象の最大の原因が温暖化だと考えられます。
ところで同じ天気をベースにしたアニメ映画が数年前に作られました。
タイトルは「グスコーブドリの伝記」で、原作者は宮沢賢治です。
アニメ映画「ブスコーブドリの伝記」の登場人物はすべてネコです。
というのは原画を書いているのが、ますむらひろしという漫画家だからです。
ますむらひろしの作品は、登場人物のほとんどが直立して人の言葉を話すネコです。
それはますむらさんが、ネコが好きだからとの理由だけではありません。
きっかけは、企業が垂れ流した水銀のために起こった水俣病の実験で、水銀汚染された魚を大量に与えられたネコが、もがき苦しんでいるのをテレビで見て、怒りを覚えたからだそうです。
「グスコーブドリの伝記」は今から80年前の作品です。
天気の子と同じように異常気象をベースにしているところは同じですが、決定的な違いがあります。
「天気の子」が温暖化によって引き起こされる異常気象に対して、グスコーブドリの伝記は気温が下がる異常気象によって、大きな災害が起こる話です。
もし宮沢賢治が異常気象の原因が気温の上昇と知ったならびっくりするでしょう。
宮沢賢治の作品には聞きなれないカタカナの地名や人名がよくでてきます。
グスコーブドリの伝記の舞台はイーハトーヴイーハトーヴという地名ですが、イーハトーヴは宮沢賢治の故郷岩手を理想化したものです。
グスコーブドリはグスコーが名字、ブドリが名前です。
ブドリは父親はきこりのナドリで、妹はネリといいました。
グスコー一家は森の中で幸せに暮らしていたのですが、ある年冷害のために飢饉になります。
そのために一家は散り散りになります。
一人ぼっちになったブドリですが、一生懸命働き生きていきます。
数年後、ブドリは尊敬するクーボー大博士に会います。
大博士は彼の一生懸命さに打たれて、ブドリにイーハトーヴ火山局での仕事を紹介してくれました。
ここでも一生懸命さを発揮したブドリは、やがて一人前の技師になります。
こうして充実した生活を過ごしますが、ブドリが27歳の時、かつて一家を散り散りにさせた寒波が起こりました。
そこでブドリはある決心を大博士に話します。
その場面での会話です。
「カルボナード火山島を爆発させたら地球全体を平均で5度ぐらい暖かくするだろう」
「先生、あれを今すぐ噴火させられないでしょうか。」。
「それはできるだろう。けれども、その仕事に行ったもののうち、最後の一人はどうしても逃げられない」。
「先生、私にそれをやらせてください。」。
3日後、カルボナード火山を噴火させることに成功しますが、ブドリは戻ってきませんでした。
数日後、イーハトーヴの気候はぐんぐん暖かくなり、その秋の作物はいつもの年と同じように収穫でき、人々は厳しい冬を乗り越えることができました。
グスコーブドリの伝記は冷害による飢饉で家族を失った少年が成長し、火山局で働き、農民の命と暮らしを守るために、厳しい自然に自分の命をかけて向かう話です。
今日本と地球全体は温暖化による災害に見舞われています。
台風も巨大化しています。
温暖化の原因は人間社会が排出する二酸化炭素CO2です。
私たちが便利で快適な生活をしようとすればするほどCO2は増えていきます。
今世界共通の課題はいかにCO2を増やさないかです。
今のまま触れ続ければ地球は滅亡するわけです。
ところが「グスコーブドリの伝記」によると、80年前はまったく逆です。
当時の地球は温度が低くなるために起こる冷害や飢饉によって、多くの人が命を奪われ、地域や家族が崩壊することになったのです。
グスコーブドリの伝記で、火山を爆発させようとしたのは太陽のCO2を地球上に排出させるためでした。
当時は、CO2は人間と社会を自然災害から救う救世主と考えられていたのです。
わずか80年の間に、CO2は世界を救う救世主から、世界を滅ぼす悪魔にされてしまったわけです。
それは二酸化炭素の性質が変わったからではありません。
変わったのは人間の暮らし方です。
人間の身勝手さが原因です。
この身勝手さは、イエス・キリストを救い主として大歓声で迎えたにもかかわらず、数日後に強盗と一緒に十字架にかけて殺せと悪魔呼ばわりした、当時の人々の身勝手さに通じるものがあります。
このことから、何が私たちを、そして私たちの生きる社会をダメにしてしまうのかがはっきり見えてきます。
私たちの身勝手さ、目の前の損か得かでしか物事を判断しない身勝手さが、私たち自身と私たちが生きる世界を根底からダメにするのです。
そういう時代に今生きています。
何か絶望的な気持ちになります。
新海監督はそれでも何か希望が持てるとしたら、それは何だろうとの思いから、アニメ映画「天気の子」を作ったとのことです。
グスコーブドリは人々を救うために火山を爆発させようとして戻ってきませんでした。
みんなの犠牲になったということでしょうか。
彼は自分のアイデアを大博士に話す時に、その役目を自分がすると決心していました。つまり、彼は自分が生きている意味と目的、そして自分の使命が何かを、大博士と出会うことによって知ったのです。
他者との出会いによって、自分が何者かがわかるということです。
他者と出会わなければ、自分のことはわからないのです。
そういう意味で「出会い」が私たちにとっていかに大事かがわかります。
今日明日から夏休みが始まります。
どのように生活しようと40日という時間の長さは同じです。
しかしどう過ごすかで、同じ時間でありながら中身はまったく違ったものになります。
そして夏休みは、1年の中で最も出会いの多い時期です。
何に出会うことができるのでしょうか。
それは友だちや仲のいい人という他者だけとは限りません。
本を読むことを通して、それまで知らなかった歴史や世界に出会うことができます。
そこから自分の進路が拓かれていくことが起こるのです。
自分の将来に出会う可能性がたくさんあるのが夏休みです。
頼まれて仕方なく参加するボランティア活動によって、それまで嫌だ、嫌いだとしか思えてこなかった自分自身と出会い、好きになることがあるのです。
課題として出されている教会の礼拝出席とレポートを面倒くさいと考える人もいるかもしれません。
しかし、そこに自分に関係する大きな出会いが用意されているとしたら、積極的になれます。
そうした思いの中で夏休みの1日1日を過ごしていきましょう。
それでは成長したみなさんと9月2日の始業礼拝でお会いしましょう。

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