礼拝の話

2020/10/14 

10月12日(月)聖書 申命記 8章3節 校長 小西二巳夫

定期試験前になると、必ずと言っていいくらい湧いてくる気持ちがありました。

それは本を読みたいという衝動です。

試験勉強から逃げたかったから、というのもあると思いますが、人間追い込まれたときや切羽詰まったときに、しなければならないことに無意識に向き合うことが起こるのだと思います。

私にとって、本を読むことがそうだったのかもしれません。

そんなことを考えながら1冊の本を読みました。

「人間の土地へ」という小松由佳さんが書いた本です。

「人間の土地へ」は世界で2番目に高い山、K2に登る話から始まります。

世界で1番高く有名な山はチョモランマ、エベレストですが、2番目となるとほとんどの人が堪えられません。

Kはカラコルム山脈のK、2は調査番号で、世界で2番目に高い山にも関わらず、正式な名前すらつけられていません。

知られていないことで有名なK2がよく知られていることは、世界で一番登るのが難しい山だということです。

エベレスト登頂に成功した人は1万人以上いますが、K2は250人しかいません。

しかも、下山中に60人以上が遭難して亡くなっています。

登頂に成功した4人に1人が死ぬという山なのです。

このK2に日本の女性として初めて登頂したのが小松由佳さんです。

小松さんはその後も高い山に登りますが、ある時生き方を大きく変える出来事に出会います。

それは、登山をするための荷物を運んでくれているポーターの現地の人たちです。

荷物運びをする人たちの生活は日本に比べると大変貧しいのですが、彼らは陽気で、表情豊かで、目は輝いています。

豊かな生活をしていると思う自分たちよりはるかに幸せそうなのです。

それを目の前にした小松さんは、本当の豊かさ、幸せとは何かを自分自身で感じたいと思い、中東アジアの砂漠地帯に向かいました。

なぜ砂漠地帯か、小松さんは砂漠地帯が一番厳しい生活の場所であると考えたのです。

本当の豊かさを知るためには砂漠の厳しい生活をすればわかると考えたのです。

知らないところに出かけていく人によく起こることがあります。

それは、求めている出会いが向こうからやってくるということです。

小松さんはシリアの砂漠で遊牧民と出会い、さらに夫となる男性と出会います。

人との出会いがいくるもの大きな出会いにつながっていきます。

「人間の土地へ」には小松さんのふり幅の広い人生が書かれています。

それを私が読むというのは、見ず知らずの人の人生を知ることです。

他の人の人生を知ることで私の世界が広がるのです。

K2に登れる人は世界中でわずかですが、本を読むことによってその疑似体験ができるのです。

この本を読んで改めて分かったことがあります。

本は出会いにあふれているということです。

本によって、その本を書いた人と出会います。

他者と出会えるということです。

本を通して、自分が今生きている社会や時代、そして知らないことと出会えます。

神と出会うこともあります。

K2に登頂した小松さんは次のように書いています。

「人間は何かを成しとげたり、何かを残さなくても、ただそこに生きていることが、すでに特別で、尊いのだ」。

これは極限状態を体験した人の言葉ですから真実味、説得力があります。

そしてこれは、申命記の言葉そのもの、イエスが弟子たちや周囲の人に語った言葉そのものです。

本を通して他者に出会い、社会に出会い、自分に出会い、そして神に出会います。

本は出会いの宝庫です。

本を読まないままでいることがいかにもったいないか、損をしているか、改めて気付かされました

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