礼拝の話

2020/11/02 

11月2日(月)聖書 ヨハネによる福音書 13章34~35節 校長 小西二巳夫

新聞の第1面のトップ記事は、その日の最も重要な記事だと判断されたものです。

2週間前の朝刊の第1面トップ記事の見出しは「19歳ひとり親『ご飯ない』」でした。

見出しから、楽しい記事ではないことはわかります。

女性の妊娠を知った男性は女性のもとを去り、シングルマザーになった女性は育児休暇を取りますが、育児休暇中は収入が減り、ちょうどコロナウイルスが日本で大騒ぎになり始めた頃で、女性の勤め先の業績も悪化し、辞めてほしいと言われます。

お金がないので紙おむつも買えず、食事も具が入っていない味噌汁だけ体重も17kg減りました。

知り合いに助けを求めると、自分で選んで産んだのだから自分で何とかしたらと責められました。

どうしようもなくなった女性はスマホで「ひとり親 ご飯ない」と支援してくれる団体を探しました。

女性の状況を知った別の知り合いが鮭のかす汁を作り、お礼のメールには「白いご飯以外の食べ物は1か月ぶり」とありました。

女性は「できないから助けて、と頼むのはダメな母親なのかな」と言いました。

新聞は次のような言葉でこの記事を締めくくっています。

『その日の食べ物がなくて困っている人は日本を含む先進諸国でもどんどん増えている。新型コロナウイルスによって、それがさらに悪い状況を招いている』。

この記事を読んで思い出したのが、8年前に書かれた梨木香歩の「雪と珊瑚と」という小説です。

小説の女性と新聞記事の女性の状況は大変良く似ています。

ただ大きく違うのは、小説の主人公の前には次から次へと必要な助け手が現れることです。

小説「雪と珊瑚と」は夢をもった女性がそれを実現していくサクセスストーリーです。

読み終えた時に、現実は違う、こんなに甘くはないと思うのです。

これを読んで思ったことは、なぜ梨木さんはこのような現実的ではない理想的な展開の話を書いたのだろうとかということです。

その疑問に答えてくれたのが、今回の新聞記事でした。

梨木さんには8年前に途上国だけでなく、日本を含む先進国で起こっている、その日の食べ物がない人たちがどんどん増えることがすでに見えていて、この作品を書いたのだと考えました。

この「雪と珊瑚と」から大切なメッセージを読み取ることができます。

人はみんな生きるためには居場所が必要だということです。

居場所にもいろいろあります。

寝る場所、食べることができる場所、働く場所、心の居場所というのもあります。

人間関係も居場所です。

別の言葉にすれば距離感です。

どんなに仲がよい間柄でも、べったりでは息が詰まります。

仲良くなれない人、好きになれない人とも、その人との間にふさわしい距離があれば、それでよいということです。

実際、主人公の周囲は彼女に好意的な人ばかりでした。

ただ一人だけ、彼女に向かって「私はあなたが大嫌いです」という人がいました。

しかし、その人の聞かされたくない言葉によって主人公は自分をしっかり見つめることができるようになり、そして好きではなかった自分を受け入れることができるようになりました。

「ここには、あそこには、自分の居場所がない」といった言い方をすることがよくあります。

しかし、主人公の生き方からはっきりするのは、居場所は与えられるものではなく、自分で探し作るものだということです。

これは清和での一人ひとりの学校生活にそのまま当てはめることができます。

一人ひとりが自分の居場所を作ろうとする、お互いがそれを認め受け入れ合う、そのような社会を作り出すことの大切さを「雪と珊瑚と」は訴えています。

そこに神の愛が働かないはずはないということです。

それをまず清和で行うことが一人ひとりに求められています。

そこに神のお計らい、愛が働くことを信じて、それをエネルギーに新しい1週間を始めたいと願います。

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