清和女子中高等学校。創立113年の高知県の私立女子校。キリスト教主義の中高一貫校です。
2020/11/13
「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」。
南米ウルグアイの第40代の大統領ホセ・ムヒカの言葉です。
2012年5月にブラジルのリオデジャネイロで、国連の「持続可能な開発会議」が行われ、各国首脳によるスピーチの最後に登壇したのが、このホセ・ムヒカさんでした。
彼の8分間のスピーチが終わると静まり返っていた会場は拍手に沸いたといいます。
このスピーチは会議の核心部分を突くものだったからこそ、世界中で取り上げられることになりました。
それは、「持続可能な開発会議」として、自然と調和した人間社会の発展や貧困問題について話し合われるはずの各国代表のスピーチが、建前だらけのようなものに受け取れる、自分たちの本音は何か、とはっきりと問いかけたからでした。
裕福な国の発展と消費モデルを真似することがこの問題への解決になるのか。
西洋の富裕社会が持つ消費の生活を、世界の80億以上いる人々、今日食べる物にも困るような人々ができると思うのか。
マーケット経済、資本主義によって無限の消費と発展を求める社会を作ってしまったこと。
残酷な競争で成り立つ消費主義社会で「みんなで世界を良くしていこう」といった共存共栄な議論はできるのだろうか。
きれいごとでは片付かない問題を本当に考えるために、私たちは何を考えなければならないのか、ということをこの南米の小さな国の大統領は訴えました。
自分たちは発展するために生まれているわけではなく、幸せになるために生きているのだ、と人間の存在の核心部分を話しました。
スピーチの最後はこう結ばれます。
「私の言っていることはとてもシンプルなものです。
発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。
発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。
愛を育むこと、人間関係を築くこと、子どもを育てること、友だちを持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。
発展は、これらをもたらすべきなのです。
幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。
環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であることを覚えておかなくてはなりません」。
私たちは本当に多くの物に囲まれて生活しています。
新しい製品が出れば、今使っている物がまだ使えるうちに新しいものが欲しくなるでしょう。
たいして壊れてもいないのに、そんなに高いものでもないから買い換えようと思うこともあるでしょう。
次から次へと新しいものを追いかけ、多くの人がそのために働いているといっても言い過ぎではないかもしれません。
でも、本当に大切なものは何か、ということを私たちは自分自身の問題として、また世界中の問題として考える必要があるのだと思います。
人生を豊かに生きることは、誰もが望むことです。
「豊かに生きる」、これは物をたくさん持っているとか、お金に不自由なく暮らすという単純なことではないでしょう。
豊かというのは、私が私として生きることができること、人と人が心を通わせて生活することができること、いろいろな出来事の中から、自分に足りないことを学び、どのようにしてそれを満たしていくかを学び続けることだと思います。
今朝の聖書の箇所には、必要なものが満たされている中で争い続けるよりも、満たされていない環境にあっても平安が与えられる方がよいと言っています。
今日、自分に与えられた1日を十分に生きること、これがこれからの自分自身を豊かにしていくものだと思っています。
“世界で一番貧しい大統領”と言われる彼は、こういいます。
「貧乏とは、欲が多すぎて満足できない人です。私は持っているものでぜいたくに暮らすことができます。」
この姿勢に学びたいと思います。