礼拝の話

2020/12/07 

12月7日(月)聖書 マタイによる福音書 2章16~18節 校長 小西二巳夫

マタイによる福音書2章はイエス・キリストの誕生に出会った人たちの話で始まります。

待ち望んでいたキリスト、平和と幸せをもたらしてくれる救い主が生まれました。

嬉しい話が続くのかと思えば、そうではありません。

13節からは「エジプトに避難する」話が書かれ、今日の箇所には「ヘロデ、子どもを皆殺しにする」というとんでもない話になります。

ヘロデ王はローマ帝国と一緒になり、人々の生活を苦しいものにし、希望がもてない日々を過ごしていた人々に、羊飼いや東方の博士たちが知らせたのが救い主誕生のニュースです。

多くの人はこれで苦しい生活から解放され平和に生きられると喜びました。

逆に、自分の地位が危うくなると考えたのがヘロデ王でした。

ヘロデ王は救い主を殺すことで自分の立場を守ろうと、2歳以下の男の子を殺すように命じたのです。

権力者が権力や武力を使って命を奪うことを虐殺と言います。

つまり、ヘロデ王は大量殺人、虐殺を行ったのです。

この話から分かることがあります。

このような悲しい出来事の中に救い主はやってこられたということです。

権力者が権力や武力を使って自分の権力や地位を守ろうとするのは、何も遠い昔のことではありません。

今の社会でも日常的に起こっています。

虐殺の悲劇が世界のあちこちで起こり、そうした虐殺から逃れるために、そして自らと家族の命を守るために逃げる人たちを難民と言います。

イエスの一家を含む多くの家族が、ヘロデ王の虐殺から逃れるために難民となったのです。

今世界で難民にされている人の数は8000万人を超え、2000年前と何も変わらない、進化していないだけでなく、当時よりはるかに多くの人たちが難民生活をしなければならないのです。

その私たちに、今日の話は何をメッセージとして送っているのでしょうか。

それを今日の日付12月7日で考えてみると明らかになることがあります。

79年前の1941年、日本時間で12月8日の明け方、ハワイ時間で12月7日、日本軍がハワイ真珠湾にあるアメリカ海軍基地を攻撃しました。

アメリカ兵2000人以上と民間人が多く亡くなり、日本は多くの国と全面戦争を始めました。

日本は武力によってアメリカに戦いを挑んだのです。

それから4年、日本は敗戦し全面降伏します。

結果的に日本国民300万人以上、アジアの人2000万人の命が失われることになりました。

多くの犠牲を出すことで、日本は武力では平和は作り出せないことを学びました。

その反省に基づいて作られたのが日本国憲法です。

この憲法によって、日本は二度と戦争をしない国になることを誓いました。

この憲法によって、日本は75年間、直接的な戦争によって命を失った人が一人もいないということを実現しています。

ところが、この憲法を変えようという声が大きくなり、動きも活発になっています。

なぜ今の憲法ではだめと考える人がいるのか、それを一言で言うと、弱いからです。

こんな弱さをもった憲法では国民や国を守れないというわけです。

日本を守るためには、もっと強い憲法を作らないといけないというのです。

そういう理屈にはそれなりの説得力があり、なるほどと思う人も多くなってきました。

そこで考えたいのがクリスマスの出来事です。

救い主、平和をもたらす存在がどのような姿でやってきたかです。

それはローマ帝国やヘロデ王に力で戦える力をもった存在ではありません。

救い主、平和をもたらす存在は弱さの象徴である赤ん坊の姿でやってきたのです。

赤ん坊は自分の力で一日たりとも生きていくことはできません。

親や家族、その他の人たちの助けなしには何もできない弱さを持っています。

しかし、赤ん坊は弱いだけの存在ではありません。

周りの人の表情をやわらげ、笑いと笑顔をもたらし、穏やかな気持ちにさせてくれます。

弱さの塊であるにも関わらず、周りの人に生きる力を与えてくれるのです。

弱いから守り育てようという気持ちを引き出してくれるのが赤ん坊です。

日本の憲法も弱さを持っています。

その弱さが75年間、日本に平和をもたらしているのです。

私たちに今求められているのは、赤ん坊を守り育てるように、日本の憲法を守るだけでなく、それを育てていくというセンスです。

そのことに気づけるなら今年のクリスマスは本当の意味で最高のものになります。

赤ん坊を守り育てていくように、弱さをもった日本の憲法を守り育てていく、そこに本当の平和がもたらされるのです。

明日から始まる2学期の期末試験にも真剣に取り組みたいものです。

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