礼拝の話

2023/03/22 

3月17日(金)終業礼拝 聖書 マタイによる福音書 5章43~48節 校長 小西二巳夫

「鋼の錬金術師」という漫画があります。

27巻8000万部が発行されているファンタジーコミックです。

錬金術を簡単に言うと値打ちの低い卑金属を値打ちの高い貴金属にすることです。

その仕事ができる人を錬金術師と呼んだのです。

鋼の錬金術師の主人公のエドは天才的な錬金術師、弟のアルも錬金術師でした。

ある時2人は錬金術師として絶対やってはいけないことをしてしまいます。

それは寂しさから死んだ母親を生き返らせようとしたのです。

そのために弟のアルが「真理の扉」と呼ばれるものの中に引きずり込まれ、助けようとしてエドは右腕と左足を、弟アルの身体を失ってしまいました。

鋼の錬金術師はエドとアルの兄弟が失った体を取り戻すために必要な「賢者の石」を手に入れるための旅に出る話です。

主人公のエドは争いや誘惑を乗り越えながら、そして助けられながら旅を続け、苦労の末ようやく「真理の扉」にたどり着き、弟のアルを取り戻すために真理と対決をします。

真理がエドに言いました。

「弟を連れ戻しに来たか。だがどうやって人間一人を引っ張り出す。代価はなんだ。お前の肉体を差し出すか。錬金術の使えない人間に成り下がるか」。

エドは「俺は小さな人間だ。錬金術がなくてもみんながいるさ」と答えます。

この言葉から人間が大切にしなければならい物が何かが明らかにされます。

エドは誰もが憧れる錬金術という超能力を捨て、コミュニティを手に入れます。

コミュニティを日本語にすると共同体、人の集まり、人間関係のことです。

鋼の錬金術師は人間が人間らしく生きるためには、コミュニティや人間関係が必要だと教えているのです。

自分らしく生きるためには、自分を受け入れてくれる、温かく包んでくれる共同体が必要だということです。

コミュニティ・共同体で言うなら、清和は学校共同体です。

鋼の錬金術師風に言うと、ここにいる人は自分を人間らしく成長させるために、清和という学校共同体の一員となったということです。

清和という学校共同体が他の学校と決定的に違うことがあります。

それは清和という学校共同体がキリスト教による人間教育をしていることです。

キリスト教の中心にあるのはイエス・キリストが教えてくれた愛です。

清和という学校共同体の一員になるとはキリストの愛を受ける人になることなのです。

その人が忘れてはならないこと、それは自分が愛の共同体の一員であるとの自覚です。

「鋼の錬金術師」が教えてくれるのは等価交換を原則にしている限り、人は本当の幸せに出会うことはない、誰もが生きやすい平和な世界を作ることはできないことです。

兄のエドの愛によって体を取り戻すことができた弟アルが言いました。

「10もらったら10返すのではなくて、1上乗せして11にして次の人に渡す」。

その、1上乗せするのが愛です。

イエスはそれを今日の箇所で次のように表現しています。

「自分を愛してくれる人を愛したところで、あなたがたにどんな報いがあろうか。徴税人でも同じことをしているではないか。自分の兄弟だけに挨拶したところで、どんな優れたことをしたことになろうか。異邦人でさえ、同じことをしているではないか」。

等価交換を価値観として生きることが、いかにつまらないか、それ以上のものは何も生まれないと言われているのです

そしてイエスは自らの言葉通り、等価交換を超える生き方をされました。

それが十字架にかかることです。

等価交換ではないキリストの十字架によって、どれほど多くの人が生きる希望を持つことができたのかは歴史が証明しています。

春休みの間、それぞれが違う場所で生活し、それぞれ違う時間の過ごし方をします。

先ほども言いましたように、人間は誘惑には弱いのです。

自分勝手なところがあります。

弱さによって等価交換どころか、相手から奪うようなこと、相手を傷つけるようなことをついついしがちです。

それをスマホなどのお手軽な道具を使ってしてしまいます。

自分がそうならないよう深く自覚しなければなりません。

自分が清和という共同体の一員であることを自覚し、等価交換を超えた愛を他者に注ぐことよって、自分を願うような自分に変え、成長させることできる、それを忘れず春休みの一日一日を過ごしたいものです。

春休みを自分の心を育てる時にぜひしたいものです。

そのことを忘れないならば、必ず鋼のような強さと、羽のような柔らかさを持ったみなさんと、4月10日、2023年度始業礼拝で再び出会うことができるはずです。

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