清和女子中高等学校。創立113年の高知県の私立女子校。キリスト教主義の中高一貫校です。
2024/06/12
アフガニスタンとパキスタンで35年間医療支援を続けて来られた日本の医者、中村哲さんは2019年12月4日に何者かによって銃撃を受け、殺害されました。
非常にショッキングな出来事でしたが、このことによって中村哲さんの働きがメディアで多く取り上げられるようになりました。
アフガニスタンの地は長く水不足に悩まされています。
その人々を本当に支援するためには、病気の治療以前に水と食料が必要だと、中村先生は考え、そこから、医者であるにもかかわらず河川工学を一から学ばれました。
そして、井戸を掘り、用水路を建設する事業を始めたのです。
そんな中村哲先生の用水路事業の最後の仕上げは、用水路の最終地点に村を作るということでした。
アフガニスタンでは未開の土地は最初に耕した人のものになるそうです。
ですから、砂漠だったその土地に水を引いて緑の農地に変え、そこに住めるようになれば、新しい村を作ることができるのです。
用水路の最下流に村を作るのは、用水路の維持管理の為です。
用水路作りに協力した人、そのための技術と経験を身に着けた人たちをその村に住んでもらい、農作物を育てるとともにその用水路の補修技術を次世代に引き継ぎながら、助け合って共に生きるコミュニティーを作ることが、中村先生の支援の最後の仕上げだったのです。
用水路の途中でトラブルが発生し、水が流れて来なくなると生活ができません。
彼らは生きるために20数キロある用水路全体のメンテナンスをしなければなりません。
けれども、そのことが上流、中流に暮らす人々のためにもなり、互いに協力し合うコミュニティーを作れば、外国から支援してもらわなくとも、自分たちで生きることができます。
自分たちで食べ物を作り、協力し合って、生きていくことができるようにしていくことが中村先生の支援活動のゴールだったのです。
現在のアフガニスタンは、情勢悪化、貧困、女性への差別、自然災害の脅威などによって、多くの問題を抱えています。
アフガニスタンだけに限らず、私たちが生きる世界には戦争があり、多くの問題があります。
その中で、中村先生の目指したものは私たちに多くの意味を与えてくれていると思います。
中村先生の言葉を二つ紹介します。
「必要な物は水と食料です。戦争ではありません。」
「武器ではなく、つるはしでアフガン復興を目指す。」
そんな、中村先生の言葉は決して綺麗ごとではなく、地に足を着けた愛の業を実践し続けてきた説得力のある言葉だと思います。
先ほど、お読みいただきました聖書の言葉は、聖書が望む世界の姿です。
人々は剣や槍という武器を打ち直して、鋤と鎌とする。
戦いの道具が、この世界を造り耕していく道具に変えられる。
聖書はこのような平和の世界を私たちに示しています。
まさに中村先生が目指していたゴールと重なり合います。
私たちも、争うことではなく、協力し合いながら、これからもこの世界を建て上げていきたいと思います。