清和女子中高等学校。創立113年の高知県の私立女子校。キリスト教主義の中高一貫校です。
2022/05/10
ゴールデンウィークの最中に、何か面白い本を探そうと思い、家の近くの本屋さんに行きました。
本屋さんに入ってすぐ、新刊コーナーの後ろに、最近の国際情勢を反映してか、戦争に関する特別コーナーが設けられていました。
そのコーナーには、トルストイの『戦争と平和』といったいわゆる名作から、政治学者の著書が並んでいましたが、その中にいくつかの絵本も置かれていました。
その一つに『そらいろ男爵』という絵本がありました。
この絵本は、第一次世界大戦開戦から100年後の、2014年にフランスで刊行されたものです。
この絵本の主人公は自分でそらいろの飛行機を作り、自由に空を飛んでいる「そらいろ男爵」。
なぜ飛行機をそらいろにしているのかというと、空と見分けがつかないようにして、誰にも邪魔されずに空を飛ぶ鳥を眺めるためでした。
そんな時、地上で戦争が始まり、男爵も戦争に行かなければならなくなり、そらいろだった飛行機を迷彩色に塗り替えて、戦争に参加します。
武器を持っていなかった男爵は、砲弾に代わるものとして本棚にある辞書や本を持っていくことにするというお話です。
ページ数でいうとわずか30ページ程度の短いお話ですが、その短いお話から色々なことを考えさせられました。
それは、言葉の持つ力の大きさや強さや、相手の言葉を受けとめ、相手の気持ちを考えることの大切さです。
私たちが物事を考える時、言葉で物事を考えイメージします。
私たちは嬉しい時や悲しい時、悩んだり考え込んだりする時、意識せずとも言葉で考え、時にはその言葉を文字や口に出して表現します。
それはどの国に住んでいようが、どの国の言葉を話そうが、同じことだと思うのです。
そうやって、無意識のうちに頭の中で様々な言葉を思いめぐらしながら、私たちはその時の自分の感情を文字に起こしたり、口に出したりして表現しているのだと思うのです。
『そらいろ男爵』に出てくる兵隊たちは、男爵の落とす本に、もっといえばその本に書かれている文章に、その本の中の言葉に心を動かされ、最後は、家族が書いた手紙、その手紙に書かれてある言葉に胸を打たれ、争うことをやめたのです。
今日の聖書箇所には言葉の大切さを、イエス・キリストという存在を通して私たちに教えてくれています。
今日の聖書箇所は、その聖書の言葉が、神の言葉が、イエス・キリストの言葉が人間を照らし、私たちに希望を与えるものであると語っています。
絵本『そらいろ男爵』は、私たちは多くの言葉によって、時に励まされ、時に自分が変えられていくことを教えてくれます。
同時に、相手の言葉をどのように受けとめ、相手のことを想ってどのような言葉で自分の想いを伝えるのかということをも教えてくれます。
新しい学期が始まって一カ月が過ぎました。
新しい人間関係が作られていくこの時期に、私自身も、自分が使う言葉の大きさを考えるとともに、周りの人の言葉の大きさにもしっかりと心を向けていきたいと思います。