礼拝の話

2022/05/09 

5月9日(月) 聖書 ローマの信徒への手紙 10章14~17節 校長 小西二巳夫

5月1日にイビチャ・オシムという人が80歳で亡くなりました。

オシムさんのことを書いた本を読み直してみました。

本のタイトルは「オシムからの旅」です。

「オシムからの旅」を他の言葉にすると「オシムから学んだこと」です。

オシムさんはユーゴスラビアという国の出身ですが、ユーゴスラビアという国は今はもう存在しません。

ユーゴスラビアはもともと「多民族国家」でしたが1990年頃から2000年までの10年間に7つの国に別れました。

分かれ方は平和的ではなく、激しい紛争で多くの犠牲者を出す悲劇的なものでした。

そして民族紛争のために国連による制裁を長い期間受けることになりました。

著者の木村さんはある時、Jリーグの監督をしていたオシムさんにインタビューしました。

「あなたが試合中に何が起こっても、冷静でいられるのは、目を覆いたくなるような民族紛争を体験し乗り越えたからですか」。

オシムさんは「確かにそういう影響は受けたかもしれない。けれど、そういうものから学べたとするなら、それが必要になってしまいます」と答えました。

短い言葉ですが、これはすごい言葉です。

よく戦争や過去の過ちから学ぶということが言われますが、それは戦争そのものを肯定することになる危険性があります。

オシムさんは短い言葉で戦争から学ぶものは一切何もないと言っているのです。

これほど、戦争や民族紛争が愚かであることをわかりやく説明する言葉はありません。

ここには戦争の体験者は1人もいません。

その私たちがオシムさんの言葉から学ぶべきことは何かです。

それは戦争から学ぶものはまったくないと断言する人の生き方や歴史を、本などによって学ぶことです。

そしてその人たちの言葉に共感する心を持つことです。

オシムさんはそのための方法も教えてくれています。

オシムさんは自分の辛い戦争体験から、選手自身が自分で考えてプレーすることを求めました。

オシムさんは、自分で考えるサッカーのおもしろさを伝えるのが神から与えられた使命だと考えたのです。

自分で考えてプレーするというのは、考えてみればごくふつうのことです。

でも自分が本当に考えているかどうか、ということの中身は、強いところと弱いところ持つ自分を客観的に、そして冷静に見直すことです。

それを通して「自分らしさ」を見つけることです。

自分らしさを見つける、それを別の言葉にすると「自己肯定感」を取り戻すことです。

自己肯定感というのは強さと弱さ、好きなところ嫌いなところも全部まとめて自分を受け入れることです。

一人ひとりがしっかりとした自己肯定感を持った人になること、それは自分のためであり、同時に他の人支える力になり、そして戦争や紛争を押しとどめる力になることを、オシムさんは教えてくれているのです。

私たち一人ひとりが自己肯定感をしっかり持つ人になること、それを目ざすことが、オシムさんと同じように、神から与えられた使命であることに気づきたいと思います。

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