礼拝の話

2022/09/28 

9月26日(月) 聖書 コリントの信徒への手紙Ⅰ 13章1~3節 校長 小西二巳夫

「本屋大賞」は新刊本を書店の店員さんの投票によって毎年受賞作を決めるという賞です。

書店員さんは本を売るプロフェッショナルであると同時にアマチュアです。

アマチュアという言葉の語源は「愛する」です。

本を愛する人が紹介する本ですから、間違いなくおもしろいのです。

ですから、本屋大賞を受賞すると間違いなく本を買う人が増えます。

出版社にとってこれはたいへんありがたいので、本屋大賞と同じような賞がいくつか作られました。

その一つに、毎年9月に発表される「料理のレシピ本大賞」があります。

受賞が決まった数日後、受賞した本の広告が新聞に載りました。

そこに書かれた宣伝文句を漢字でまとめると簡単・時短・節約です。

書店員さんたちはおいしい料理を作りたい人、食べたい人、食べさせたい人、そして幸せな気分になりたい人に、ぜひ買って読んでほしいと願って書いたはずです。

そして書店員さんは、そこに料理を作る人の愛を感じたから選んだはずです。

ところが新聞の広告にはそれを感じさせる言葉がありません。

そして、すべて「簡単・時短・節約」にまとめられてしまっているのです。

簡単・時短・節約はできる限りムダをせず結果を出すことを求める言葉で、今やこの言葉が日本社会や世界のトレンドになっていることです。

トレンドというのは、流れ、動向という意味です。

そこで気がつきたいのは、私たち一人ひとりも自分の生活や人間関係に、簡単・時短・節約を当たり前のように求めるようになっていることです。

スマホを使えば、たいていの情報はすぐに手に入れられます。

スマホを使うとすぐに友だちができるなど、簡単に人間関係が作れます。

それも会ったこともない、行ったこともない場所の人と知り合いになれます。

そうすると、時間や費用がかかることはダメ、簡単にできないことはゆるせない、思い通りにならない人間関係は気に食わないとなってしまいます。

私たちは今そういう時代に生きているのです。

この流れトレンドに逆らうことはなかなかできません。

だからこそ忘れてはいけないことがあります。

「料理を作る」、「教育する」から考えるとそれが何かがわかります。

料理をする人や教育をする人の、食べる人や学ぶ人への愛する思いです。

愛するというのも、様々なタイプがあります。

その1つに「愛ずる」があります。

「愛ずる」というのは昔から日本にある表現です。

愛ずるにはじっくり見てじっくり受けとめるとのニュアンスが込められています。

お手軽でも時短でもありません。

日本料理の本来の作り方は材料をていねいに扱うことから始まります。

じっくり煮る、じっくり焼くなどによって、素材そのものが持っているおいしさを引き出すことができるのです。

教育も日本料理の考え方と一緒です。

清和のキリスト教の精神である「愛する」がベースです。

そこで清和は愛するをベースにその人の持つ学ぶ力や生きる力を、簡単・時短・節約ではなく、本人と一緒にじっくり引き出す教育に取り組んできました。

すぐに結果を求める教育を行ってこなかったのです。

あるCMでさまざまな役に扮したおかみさん役の大地真央さんが決めゼリフ「あんた、そこに愛はあるんか」と必ず言うものがあります。

このセリフを言う時の女将さんは実にカッコいいのです。

そこに愛はあるんか、という言葉には、簡単に答えを出すな、人を相手を簡単に決めつけるなとの強い思いが込められています。

新約聖書ヨハネの手紙Ⅰの4章16節には「神は愛です」という言葉があります。

神=愛だということです。

これを「そこに愛はあるんか」という女将さんのセリフに重ねると、「そこに神はいるんか」となります。

簡単・時短・節約が当たり前の時代に生きている私たちです。

だからこそ、自分を本当に大切にするために忘れてはならないのが、「そこに神はいるのか」、この一言です。

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