礼拝の話

2024/10/29 

10月17日(木) 聖書 マタイよる福音書 5章38~43節 校長 小西二巳夫

今日の聖書の5章38節からの話の見出しは「復讐してはならない」です。

イエスは「復讐してはならない」の箇所で、報復する必要が本当にあるなら、それは神がされる、だからすべて神にまかせなさい、と言われています。

イエスは先入観で人を見ること考えることがむなしく不幸であり、自分を正しい側に置いて、人や出来事を見ないことの大切さを語っています。

そして、一人ひとりが敵を愛する、つまり敵も隣人と受けとめることのできる自分になること、お互いがそうなる社会にしていくこと、それが自分の人生を幸せにすることであり、平和な社会を作ることだと言われているのです。

さらに、目には目を歯には歯的考えの武器による報復を防ぎ、復讐を抑え込むには言葉しかない、言葉の力を信じることだと話されているのです。

このイエスの言葉を自らの深い悲しみを通して実行した人がいます。

2015年11月13日、フランスの首都パリで同時多発テロが起こりました。

このテロ事件はフランス国内に大きなショックを与え、国全体に報復するとの空気が生まれ、テロとは無関係の人たちに暴力を振るう事件があちこちで起きました。

そうした中で、事件が起こって3日後、「ぼくはきみたちを憎まないことにした」というタイトルの、テロリストに向けての手紙がSNSによって発信されました。

手紙は、テロリストは愛する妻であり息子の母親の命を奪ったが、だからと言って、ぼくの憎しみを手に入れることはできない、との言葉で始まっています。

レリスさんが手紙を書いた目的は、テロ事件によって大切な人を奪われた自分や他の人の悲しみを多くの人に想像してほしかったからです。

けれど妻と母を奪われた悲しい気持ちを憎しみでいっぱいにしたら、テロリストと同じように自分も人間らしさを失うことになると考えました。

テロを実行するためには正しいことをしていると自分に思い込ませることが必要です。

そこでもし、被害者が報復行為に出ればテロリストは、自分は正しかったと安心します。

そうではなく、自分がしたことはむなしい行為であったとわからせることで、テロ行為をなくし、テロリストを作らないことにつながります。

とは言うものの、レリスさんにテロリストを憎む気持ちがないはずはありません。

何かの瞬間に、憎しみは湧き上がってくるはずです。

その憎しみを抑え込むには、憎まないと多くの人に宣言することだと考えたのです。

レリスさんは「憎まないことにした」と未来型を使っています。

そこに今もこれからもテロリストと同じ人間にならないとの決意が込められています。

テロリストに向けての手紙「ぼくは君たちを憎まないことにした」は、あっという間にフランス中に、そして世界に拡散しました。

そしてこの手紙によって、多くの人たちが冷静さと人間性を取り戻しました。

一人の言葉が多くの人を憎しみと報復行為から救い出したのです。

レリスさんの「ぼくは君たちを憎まないことにした」は、イエスの「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい」にそのまま重なります。

そして言葉の力が暴力に勝ることを教えてくれます。

さらに私たちが自分の言葉を持つことが、平和を作り出すことにつながることを教えてくれます。

清和が毎朝礼拝をおこなうのは、毎日授業を行うのは、そして今日最終日を迎える定期テストを行うのは、私たちが人間らしく生き、そして平和な社会を作るためには、それぞれが自分の言葉を持った人になる必要があるからです。

イエスにつながる人になるためです。

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