最新情報・お知らせ

2024/03/04 

学園報SEIWA 2月号 巻頭言

アインシュタインの写真に落書きをした私

 高校1年生の物理の時間のことでした。先生が板書をしながら「相対性理論」の説明を始めました。相対性理論=アインシュタイン、20世紀最大の物理学者でノーベル物理学賞を受賞した人、程度の知識はありました。けれど先生の説明は難しくてわかりません。教科書に載っているアインシュタインの写真はまじめな学者には見えません。身なりや見た目には関心がないようです。ボサボサの白髪のヘンなおじいさんです。何よりヘンなのは、写真はいたずらが見つかった時の子供のように、舌を出しているものだったことです。

 先生の相対性理論の説明に関心が湧かない私が始めたのは、小学生がよくする教科書の写真への落書きでした。アインシュタインのヘンな写真をもっとおもしろくしようと帽子を被せ、眉毛を太く書きメガネをかける…。それを隣で同じようなことをしていたN君と見せ合って思わず笑ったことを思い出しました。何とも恥ずかしい話です。

相対性理論に出会った通知表オール1だった23歳

 同じようにアインシュタインの相対性理論の説明を聴きながら、私とは真逆に深い関心をもったのが宮本延春さんという人です。宮本さんは、超難関大学の理学部物理学科を出て高校の物理の先生になりました。こう書くとたいていの人は宮本さんが学校時代よく勉強のできる生徒だったと思うはずです。けれど宮本さんの中学校の通知表はオール1でした。中学校を卒業する時に九九で完全に言えるのは2の段だけ、きちんと書ける漢字は自分の名前だけ、英語で読めるのは「BOOK」だけでした。いわゆるできない生徒でした。宮本さんは中学卒業と同時に大工見習として働き始めましたが、すぐにやめます。対人関係がうまくいかずいじめられることがよくあったからです。そんな毎日を過ごしていたある時、知り合いが偶然貸してくれたのがアインシュタインの相対性理論をわかりやすく説明したテレビ番組のビデオでした。宮本さんは90分間我を忘れたようにビデオを見ました。見終わった時、大学で物理を勉強したいと思うようになり、そのまま本屋に行って小学3年生の算数のドリルを買ったのです。23歳の時です。それから4年後に超難関大学の理学部に合格するわけです。

「特別扱い」にはよくない意味もある

 新約聖書に「タラントンのたとえ」という話が書かれています。タラントンは当時の高額なお金の単位でタレント(能力、芸能人)の語源です。この語源からもわかりますが、この話は、すべての人間が使い切れないほどのお金を持っている、つまり無限の能力を与えられていることを伝えています。それが見える形にならないのは、その人自身に何か問題があるからと教えています。宮本さんは親の都合で転校を繰り返します。
 その中で次第に自分が勉強できないのも嫌いになるのも親や大人が悪いから、自分は悪くないと思うようになりました。そして、自分自身が嫌いになっていきました。その宮本さんがアインシュタインの番組に出会って、自分で自分をダメにしていることに気づいたのです。
 悪い意味で自分を「特別扱い」していたことがわかったのです。自分を自分で特別扱いをしている限り、学校や毎日の生活が楽しくなくなっていくのです。

清和は一人ひとりを大切に受けとめたいと考える学校

 清和は一人ひとりを大切に受けとめたいと考える学校です。そこで2つのことを大事にしています。その一つが、宮本さんの気づいた「特別扱い」をしないことです。周りがその人を、そして自分で自分を特別扱いすることがその人を成長させないことになるからです。
 もう一つ大切にしているのは、誰もが持っている「弱さ」です。強さではありません。弱さを大切にする、これを別の言葉に言い換えると「心を大切にする」です。心はその人そのものです。つまり、弱さを大切にするとは、その人を大切にすることになります。その人をそのまま認めて受け入れることです。自分の弱さを大切にされることによって、人は自分では気づかない内側に持っている勉強したいとの気持ちやあきらめない気持を外側に引き出すことができるのです。
 忘れてならないのは、宮本さんが変わることができたのはアインシュタインと出会ったからです。清和ではそうした出会いがたくさんあります。清和は一人ひとりのための出会いが用意された学校です。

学校生活の様子

学校生活|中学校一覧へ

学校生活|高校一覧へ

学校生活一覧へ

礼拝の話一覧へ

中学・高校 学年の通信から一覧へ

クラブ活動一覧へ

▲ページトップへ