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2019/10/10 

校長の話 9月 2学期始業礼拝 ヨハネの手紙Ⅰ 3章16~18節

9月の初めのことで思い出すことがあります。
今から60年近く前の小学校2年生の2学期の始業式の日のことです。
その日、私はドキドキしながら小学校に行きました。
というのは引越しをして新しい学校に転校する朝だったからです。
母と学校に行くと会議室の様なところで連れて行かれました。
そこには私と同じように転校してきた人たちが数人いました。
その頃の学校では毎日校庭で朝礼がありました。
朝礼台の上から校長先生や他の先生の話があって、さらに児童会の会長から、今日はこうしましょう、という話で終わるのがふつうでした。
そして始業式や終業式の時は朝礼がいつもより長くかかりました。
その日の始業式では、私を含む転校生が朝礼台の上にあげられ紹介され、そしてよろしくお願いします、あいさつしたのを覚えています。
恥ずかしかったことしか記憶がありませんが、1つだけ校長先生の話で覚えているフレーズがあります。
それは「9月1日が防災の日になりました」です。
その年に防災の日ができたわけです。
昨日の9月1日は「防災の日」でした。
9月1日が防災の日となったのは96年前の1923年9月1日に発生した関東大震災にちなんだものです。
さらにこの時期は台風の発生が多く、災害への備えを怠らないように、との戒めも込められたようです。
東京を中心とした関東地方に発生した関東大震災によって、10万5千人の人が亡くなりました。
当時は木造の家屋だったのでほとんどの家が倒壊しました。
ちょうどお昼ご飯の支度をする時間帯であったので、大火災も起こりました。
当時はテレビラジオがなかったので情報は新聞だけでした。
ですから何が起こったのか、ほとんどの人がわからず、不安や恐怖からデマが飛び交いました。
デマの中には朝鮮の人が暴動を起こした、井戸に毒を投げ込んだ、などというのがあり、そのために朝鮮の人たちをはじめとする多くの人たちが虐殺される出来事も起こりました。
自然災害と人間の過ちによって、たくさんの命が失われたのです。

防災とは何ですか、と尋ねられると、たいていの人は反射的に「台風・地震・火事などの災害を防ぐ」と答えるはずです。
間違ってはいませんが、何かちょっと違うような気がします。
というのは、気をつけていても、人間の力によって台風・地震などがやって来るのを止めることはできないからです。
今年も豪雨などの自然災害によってあちこちで大きな被害が出ていますが、雨が降るのを防ぐことはできません。
人間に防げることできることがあるとしたら、それは被害を小さくすることです。
そして間違った判断しないことです。
東日本大震災で、できるだけ高い場所に逃げなければならない時に、判断ができず、校庭にとどまったために、多くの生徒の命が奪われた学校があります。
命を守る、この大切なことを失敗しないで行うためには、日頃から考えておかなければならないわけです。
命を大切にするというのは当たり前のことです。
当たり前のことというのは、当たり前すぎてあまり真剣に考えないことにもなりがちです。
失ってからそのことの大切さに気付かされるということも少なくありません。
「大切にする」を聖書の言葉にすると「愛する」となります。
今日の聖書にはお互い愛し合いなさいと、書かれています。
幸せになってほしいということです。
みなさんでいうなら、毎日の学校生活の中で、ぜひ幸せを感じながら過ごしてほしいということです。
私が受け持つ聖書の授業のレポートに、幸せになるためには何をしたらいいですか、との質問を書いてくれた人がいました。
前後の言葉から、まじめな質問であることがわかったので、私も真剣に言葉を選んで答えようと思いました。
その時、私はタラブックスについて書かれたものを読んでいたので、そのことに触れながら書きました。
タラブックスというのはインドにある出版社です。
社員は50人という小さな会社です。
それにもかかわらずタラブックスは世界的に有名な出版社です。
というのは、本にするまでのすべてを自分たちで作るからです。
使う紙もインクも手作りです。
印刷製本もすべて人の手で行います。
そのために注文してから手に入るまで相当待たなければなりません。
楽しい絵本などを作っているので、機械化すればもっと利益がでるのですが、それはしません。
それにははっきりとした理由があります。
大量に作って大きな利益を出しても、自分たちは幸せを感じられない,毎日の生活の中にある小さな喜びや出会いを感じることはできないからだというわけです。
会社を大きくすることで、なんでわざわざ小さな幸せを手放さなければならないのか、そんな必要はないというのです。
そこで小さくていいとの選択をしたのです。
この考え方は、清和に通じます。
この学校はある時期に小さな学校、小規模のままでいることを決めました。
それは一人ひとりの存在、命を大切なものとして受けとめるためには大きくなっては難しいと考えたからです。
大きくなることを第一に考えたら、小さなことを見過ごしてしまいます。
一人ひとりの成長と変化を見過ごしてしまいます。

英語で変化というとチェンジという言葉が思い浮かびます。
イメージチェンジというように、これは見える変化です。
でも変化には見えないものもあります。
それをトランジット、トランジションといいます。
トランジットの最中というのは、実はその人が悩んでいる時、苦しんでいる時、自分の存在の大切さがわからなくなっている時です。
1人のトンランジットを周りが感じるためには小さな学校、小人数でなければならないと、清和は考えたのです。
だから安心して悩んでください、と質問をした人のレポートに書きました。
防災がお互いの命を守ることを出発にしていること。自分の命と存在が大切にされる中で、悩みや自分がわからなくなっていることが、トランジット目に見えない成長の中にあること。
それを忘れずに、学校生活の中にある小さな喜びを見つけるように一日一日を過ごしていくなら、この2学期が実に幸せな時となることは間違いありません。

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