礼拝の話

2024/01/19 

1月15日(月) 聖書 イザヤ書 44章21~23節 校長 小西二巳夫

「一見さんお断り」という言葉から1冊の絵本を思い出しました。

絵本のタイトルは「モーツアルトはおことわり」です。

イギリスのマイケル・モーバーゴという人の作品です。

この絵本はある新聞社の新人記者が、世界的なバイオニリストのパオロ・レヴィにインタビューをするところから始まります。

新人記者がインタビューするにあたって、絶対にしてはいけないと注意されたことは「モーツアルトに関する話題は一切にしない」「プライベートな質問もしない」ということでした。

もし、それをしたらパオラ・レヴィは機嫌を損ねることになり、取材が中止になるかもしれないということでしたが、新人記者は有名バイオリニストを目の当たりにした途端、頭の中が真っ白になり、準備していた質問をすっかり忘れて、思わず言ってしまったのです。

「モーツアルトの件についての質問はダメだと言われました。どうしてかは知りませんし、モーツアルトの件そのものが何かを知らないので、質問のしようもありません。とにかく、お好きではないと聞いておりますので、その質問はいたしません」。

この一言によって、すべては終わったかと思われました。

ところがパオロ・レヴィは何かを決心したようにある物語を話し始めたのです。

話は1930年代の後半、彼の父親の人生から始まります。

もともとバイオリニストだった父親は、ユダヤ人であったためにナチスドイツによって強制収容所でガス室に送られるはずでしたが、収容所のオーケストラの一員にされました。

戦争が終わり父親は解放され、生まれ故郷のベニスに戻ってきましたが、大勢の同じユダヤ人が虐殺されていく中で、バイオリニストであったために死なずに済んだことに後ろめたさを感じ、ユダヤ人虐殺の手先になったと後悔して、音楽を捨てて散髪屋になりました。

息子であるパオロ・レヴィはひょんなことからあるバイオリニストに出会い、音楽家としての才能を見出されますが、ただ一つゆるさなかったことがあります。

モーツアルトを自分の前やコンサートで絶対弾かないことでした。

父親の強制収容所での過酷な体験を知ったパオロ・レヴィは約束通り、どんなに頼まれてもモーツアルトを弾くことをしませんでした。

「モーツアルトはおことわり」は言い換えると「戦争はおことわり」です。

モーツアルトを演奏しない、ということを通して、戦争を二度としてはならない、起こしてはならない、という強い思いを持つことを誓ったのです。

新しい年が始まりました。

私たち一人ひとりにはそれぞれ自分だけの課題や目標があります。

それにしっかり取り組むことが求められています

同時に一緒に考えなければならない課題や目標もあります。

「モーツアルトはおことわり」が教えてくれることの一つに「忘れない」があります。

今この時代に生きる私たちには忘れてはならないことがあります。

その一つが1月1日に発生して、多くの命が失われ、多くの人が不自由な生活を余儀なくされている「令和6年能登半島地震」です。

そしてロシアのウクライナへの侵略戦争やイスラエルによって攻撃を受けるガザで、苦しい思いをしながら、私たちと同じ時間を過ごしている人たち、特に子どもたちのことです。

それを忘れないとの気持ちをしっかり持つことが今を生きる私たちに求められているのです。

大災害は突然襲ってきます。

一見さんのように、頼みもしないのに突然やって来ます。

しかも土足で入り込んできて、多くのものを奪います。

そして深い悲しみや傷を残して去っていきます。

戦争はもっとひどい形で入り込んできます。

戦争は一見さんです。

招かざるお客、絶対に来てほしくないお客です。

戦争や紛争に対して「一見さんおことわり」という思いを一人ひとりが強く持つことを、神は私たちに強く求められています。

それにしっかり応えることのできる自分になりたいと心から願います。

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