礼拝の話

2023/11/06 

10月23日(月)特別修養会 賛美礼拝 聖書 マタイによる福音書 5章8~10節 校長 小西二巳夫

「君たちはどう生きるか」というタイトルの作品があります。1つは吉野源三郎の作品です。

吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」は1937年、戦争の空気がどんどん膨らんで、多くの人が生きづらさを感じるようになった時代に、その時代に生きる若い人たちに、自分がどう生きるのかを自分で考える人に育ってほしいとの願いから書かれたものです。86年前の古い本が再び読まれるようになったのには理由があります。今の時代が、吉野源三郎が「君たちはどう生きるか」を書いた時代の空気と同じだからです。戦争の臭いが強くなると同時に多くの人が生きづらさを感じるようになっているからです。

そしてもう1つ、スタジオジブリの宮崎駿監督の作品が上映されました。映画「君たちはどう生きるか」の前宣伝は一切されませんでした。そして、吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」が宮崎監督の愛読書であることは知られているので、多くの人が吉野源三郎の本を原作に作った映画ではないかと想像しました。私もそうですが、その想像は見事に裏切られました。そして裏切られてよかったと思えるのが映画「君たちはどう生きるか」でした。

映画「君たちはどう生きるか」が伝えようとしているのは「自分自身を大切にできる人になること」、そして「ふつうの生活」を大事にすることです。

それは吉野源三郎が「君たちはどう生きるか」で「戦争への空気がどんどん膨れ広がり、多くの人が生きづらさを感じる時代に、その時代に生きる一人ひとりに、自分がどう生きるのかを自分で考える人に育ってほしい」と伝えようとした、同じメッセージが、この映画に込められていることがわかったからです。

二人に共通するワードは「平和」です。そして平和をつくることと守ることを他人任せにしていないことです。平和というと「戦争と平和」「世界平和」といった大きなものと考えがちです。そうすると自分にはできない、関係ないとなります。

誰か偉い人や力のある人から与えてもらうもとなります。

そういう人間の心理を2000年前にわかっていたのがイエスです。そこでイエスは次のように言われたのです。

「平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる」。

イエスは、平和はあなた方が、つまり私たちが幸せな人生を過ごすことそのものだと言っているのです。そうすると、平和は遠くにあって、私の力ではどうすることもできないものではなく、身近にあって真剣に自分自身で考えるものだということになります。そして、イエスは平和をつくりだす、つまり幸せな人生を過ごそうと真剣に取り組む人たちを「神の子」という最高のほめ言葉でほめたのです。

今戦争というと、ロシアがウクライナでしていること、そして、今一番深刻な状況にあるイスラエルとガザを実効支配しているハマスの戦争であって、それらは日本に関係がない、日本は戦争をしていないと思いがちですが、直接戦争はしていなくても経済援助などさまざまな形で戦争に協力はしているのです。

50年前、当時アメリカはベトナムで15年間戦争を続けました。ベトナム戦争です。

ベトナム戦争でアメリカは爆撃機による攻撃で無差別にベトナムの人たちの命を奪いましたが、その爆撃機が爆弾を、そして多くの兵士を乗せて飛び立ったのは、沖縄にあるアメリカ軍基地です。沖縄は日本です。日本から爆撃機が無差別の爆弾攻撃をするために飛び立っていったのです。そして沖縄は兵士の戦争訓練として使われました。

このことについて、想像力を少し働かせると、日本がアメリカの行うベトナム戦争に協力をしていたことがわかります。

そうした歴史を持つ国に生きる私たちに、「君たちはどう生きるか」と吉野源三郎は本で、宮崎駿は映画で、そして、イエスは聖書を通して、想像力を働かせる人になること、想像力を持って物事を見る人になることを求めているのです。平和が、一人ひとりが平和への想像力を働かせなければ実現できないからです。

しばらく前のことですが、沖縄の知り合いから、キリスト教会が行っている「ゴスペルを歌う会」を高知でもするので、参加してほしいとの誘いがありました。ゴスペルを歌う会は、基地の中にいる武力によって平和は実現すると信じている人たちに、武力を捨てることによって、平和を実現できるとの聖書の考え方に一緒に立ちましょうと呼びかけているのです。その気持ちを込めて賛美歌を歌い、お祈りをするのです。賛美歌を歌いながらあらためてわかったことがあります。賛美歌を教会や学校のチャペルの中で歌う時、それは神を賛美する歌です。けれど、それをアメリカ軍基地の前で歌う時、そして公園で歩いている人に歌いかける時、賛美歌は戦争を止めてほしいとの祈りを込めた反戦歌になるのです。

私たちは毎朝の全校礼拝で賛美歌を歌います。そこで、その賛美歌を今戦争しているイスラエルとガザのハマスの指導者に、今も戦争が続いているウクライナ向けて歌うなら、それはそのまま反戦歌になる、すぐに戦争を止めて停戦してほしいとの意思を届けることになるのです。

イエス・キリストの神がそれを届けてくれることを信じて、全校礼拝で、帰りのホームで、12月のチャペルクリスマスの練習で、共に賛美歌をしっかり歌いたいのです。

学校生活の様子

学校生活|中学校一覧へ

学校生活|高校一覧へ

学校生活一覧へ

礼拝の話一覧へ

中学・高校 学年の通信から一覧へ

クラブ活動一覧へ

▲ページトップへ