礼拝の話

2022/10/06 

10月6日(木) 聖書 イザヤ書 60章1~3節 日本キリスト改革派 山田教会 高内信嗣

以前「はらぺこあおむし」という有名な絵本からお話をさせていただきました。

この絵本の作者のエリック・カールさんは昨年、逝去されました。

彼はアメリカのニューヨーク州に生まれましたが、両親はドイツ人で1935年、彼が6歳の時に家族と共にドイツへ移住しました。

第二次世界大戦の間、高校生になるまでエリックはドイツで過ごしました。

当時のドイツはナチス政権です。

ヒトラーは近代美術をひどく嫌い、政権にそぐわないと判断した芸術作品に「退廃芸術」とレッテルを張りました。

「退廃芸術」による表現の規制は美術だけではなく、音楽や映画などあらゆるジャンルに及びました。

そのような表現の自由が制限される一方、ナチス政権は人種差別主義やナショナリズムに価値を置く作品を国民に広く推し進めたのです。

エリック・カールが移住したのはそのような時代のドイツでした。

エリックはインタビューでこう語っています。

「爆撃機から目立たないよう、家は茶色やクリーム色に塗り替えられていましたし、町では、鮮やかなスカーフや服を見ることもなくなりました。すべてが灰色だったのです。」

芸術作品だけではなく、市民生活もさまざまな形で抑制された弾圧の中でしたので、エリックはピカソやマティスという芸術家のことを全く知りませんでした。

エリックが12歳の時のある日、美術の先生がこっそり、禁じられていたピカソやマティスの色鮮やかな作品を見せてくれて「君は自由に絵を描けばいい」と言ってくれたそうです。

エリックの作品は、とても色鮮やかです。

「はらぺこあおむし」のラストに描かれる蝶々の色彩には圧倒されます。

エリックの色鮮やかな作品の背後には、ナチス時代の経験があったのです。

モノクロの世界を生きた彼は、鮮やかに本を描くことによって、人々に勇気を与えたいと願っていたのです。

私たちの世界は時に、色を失います。

一人ひとりの大切な個性が封じられます。

ナチスの時代はほんの80年前の出来事です。

そして、私たちの生きる「今」も、世界で戦争が続いています。

人間の大切な命が軽んじられ、ある意味で、色彩を失ったモノクロの世界なのかもしれません。

本日の聖書の言葉に目を向けたいと思います。

「起きよ、光を放て。あなたを照らす光は昇り/主の栄光はあなたの上に輝く。見よ、闇は地を覆い/暗黒が国々を包んでいる。しかし、あなたの上には主が輝き出で/主の栄光があなたの上に現れる。」

聖書に記されてある1つの希望のメッセージです。

神の民の上に、光が昇る。

さらに光が照らされていない外の国の人々にも目が向けられています。

3節「国々はあなたを照らす光に向かい/王たちは射し出でるその輝きに向かって歩む。」

暗闇の世界を生きる人々も光を慕い求めることが語られています。

神さまは人間が暗闇の世界にいることを決して望んでおられないということです。

このチャペル礼拝の時間は、ここに記されている神の光を見る時間です。

苦しい時代を生きたエリックは色鮮やかな色によって、読者が羽ばたいていくのを望みました。

私たちに色彩を与えてくれるのは神さまです。

神さま皆さんが暗闇の中で生きていくことを望んでおられません。

私たちを照らしてくださいます。

私たちのいのちを豊かに用いてくださるお方です。

この時間、神さまの光をいただいて、またこの一日、私たちはそれぞれのカラーでこの世界を彩りたいと願っています。

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