礼拝の話

2024/02/21 

2月19日(月) 聖書 申命記 8章1~4節 校長 小西二巳夫

万城目学という作家が書いた『8月の御所グラウンド』という本があります。

万城目さんは先日、この小説で直木賞を受賞しました。

小説『8月の御所グラウンド』の舞台は、私が50年前にソフトボールの授業を受けた御所

万城目学の小説には必ず不思議な存在が出てきます。

奈良を舞台にした『鹿男あおによし』という作品には、渋い声で人間の言葉を話す鹿。

『バベル九朔』では女性に変身するカラス。

そして『8月の御所グラウンド』には、80年近く前の戦争で命を奪われ、この世にはいないはずの野球が大好きな人たちが登場します。

その一人が、えーちゃんです。

主人公たちの目の前にいる野球の上手なえーちゃんが、プロ野球の草創期にジャイアンツ巨人のエースとして活躍をした伝説の大投手で、3度徴兵されて兵士として戦争に行かされ、3度目の徴兵でフィリピンに向かう船が撃沈されて戦死した沢村栄治だということを知りました。

そして、えーちゃんが連れてきた遠藤君が大学に入学しながら3ヶ月後に徴兵を受け戦死した青年だとわかりました。

野球がヘタな自分たちと一緒に野球を楽しそうにしている彼らがなぜ現れたのか、あれこれ考え、そして気がついたのです。

えーちゃんたちは野球がしたかった、そして生きたかったのだ、と。

それを国が愚かな侵略戦争を始めために野球ができなくなり、学ぶことができなくなり、命を奪われ生きることができなくなったのです。

えーちゃんたちの命が戦争によって奪われたこと、好きな野球ができなくなったことは、過去のことではありません。

今まさに起こっていることです。

ウクライナで、パレスチナのガザで若い命が簡単に奪われています。

生きることを奪われ、大好きな競技ができなくなった人たちが大勢いるのです。

『8月の御所グラウンド』はそのことをあらためて教えてくれています。

そして聖書は、国や権力者が戦争をすることによって、若い命を簡単に奪うこと、好きなことができなくさせていることに対して、あきらめずに「ノー」といえる考えをしっかり持った人になることを、私たち一人ひとりに求めています。

主人公はその求めにちゃんと応えることが、自分の人生をちゃんと生きることだと気がつきました。

私たちもぜひそうでありたいと願います。

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