礼拝の話

2022/01/12 

1月11日(火) 3学期始業礼拝 聖書 マタイによる福音書 11章28節校長 小西二巳夫

「人生相談とクッキング」という本があります。

この本の出版元はビッグイシュー日本という組織です。

ビッグイシューの雑誌や本の売り方、買い方は少し変わっています。

まず、質のいい雑誌をつくります。

そして、それを売るのがホームレスの人です。

大阪や東京などの都会に行くと、駅前や広場で本を持って立っている人や地面に本を並べて売っている人たちを見かけます。

その人たちがビッグイシューの売り手です。

ホームレス、つまり居場所を持たない人の多くが何らかの形で働いています。

働いていない場合も、働きたいけれど働く場所がないということが多いのです。

そこで、本を売る仕事を提供して自立をオウエンするのがビッグイシューです。

例えば450円の雑誌を1冊売れば、売った人は230円がもらえます。

雑誌を売ることで、落ち着いた生活を取り戻した人たちが大勢います。

「人生相談とクッキング」はビッグイシューに載っている人生相談を1冊にしたものです。

ビッグイシューに寄せられる悩みはどのようなものかといれば、ごくふつうです。

「友だちが時間にルーズでストレスがたまります」

「人づきあいが苦手で、周囲をフリーズさせてしまいます」

「考え方が後ろ向きで、他の人を罵る気持ちになります」

こうした質問に回答するのは、ふつう専門家、社会的に立派な人や有名人です。

ところがビッグイシューの場合、相談の回答者は、まあふつうではありません。

回答者はホームレスや路上生活経験者だからです。

ある人は思うかもしれません。

そんな立場の人から、しっかりした回答がもらえるだろうか。

そこで考えたいのは、ホームレス生活をしている人はもともとふつうの市民生活をしている人たちがほとんどだったということです。

大学を出て、一般企業で働いていたけれど、ある時から人生の歯車がかみ合わなくなってしまったという人、会社を経営していたけれど、倒産をきっかけに家族がバラバラになり、孤独の中で路上生活をするようになった人たちです。

何かをきっかけに、人生のどん底を味わうことになった人たちです。

その人たちの言葉には、厳しい体験をしたことがある人だけが持っている、あたたかさや思いやり、ユーモアがあります。

何か心にしみて、元気が出てくるのです。

こんな相談がありました。

タイトルは「人の言葉を深刻に受けとめてしまいます」。

「私は人から何か言われると、都合よく受け流せません。なんでもそのまま受けとめてしまい、いつもつらくなってしまいます。どうしたら人の言うことに悩みすぎることなく過ごせるのでしょうか。22歳女性会社員」。

これに対するTさんの回答は次のようなものです。

「そうやね、私も若い頃にあなたと同じ悩みを経験しました。周りにいる仲間からちょっと何かを言われたこととか、さらっと受け流せなくて、ずっとひきずって悩んだものです。受け流すどころか「どうして、そんなことを言われるんだろう」と原因が気になって考え込んでしまったことも何度かあったしね。この歳になって当時のことを振り返って見ると、なぜ周りの声をそれほどまで気にしていたんだろうと不思議に思えます。あなたはきっと神経が細やかな人、心が純粋なのよ。だからこう考えなおしてみたらどうでしょう。何かを言われることは、周りの人にとって声をかけやすい人だっていうことでしょう。それにね、あなたくらいの年齢でどんなことを言われても都合よく受け流せるとしたら、それは逆に怖いことだと私は思うよ。ちょっとしたことで一喜一憂するのが若さであり、そうする中で、いろんなことを考えて人間関係を少しずつ学んでいくもんだから。私から見たら、些細なことで悩んでしまう若い人はとてもかわいく見えます。何を言われても堂々としている子のほうが、反対に大丈夫かなとおもってしまうもん」。

さらにビッグイシューの人生相談には、回答のほかに、悩んでいる人に料理研究家の枝元なほみさんが、ふさわしい料理にコメントを交えて紹介しています。

「人の言葉を深刻に受けとめてしまいます」には「甘やかしパフェ」が提案されます。

材料はマンゴー、ブルーベリー、ビスケット、プリン、バニラアイスにプレーンヨーグルトなどです。

そして次のようなコメントが添えられています。

「自分を甘やかしませんか、という悪魔のお誘いです。くよくよしそうになったら、お散歩にでも行ってお店によって、甘やかしに必要な甘いものをたくさん買い込んで、好きなだけ盛りつけて“ふふふ”なんて言いながら、パフェを食べてみてください。意外に効きますよ。よろしければお友だちも一緒にどうぞ」。

新約聖書の4つの福音書にはイエスの言葉がたくさん出てきます。

その多くは、当時生活に苦しんでいる人、心の拠りどころを失った人に対してのものです。

そのイエスですが、聖書によると、家畜小屋の飼い葉おけで生まれています。

そのわけは、出産を前にした母マリアを泊めてくれる宿屋がなかったからです。

イエスはホームレス、居場所のない子として生まれたのです。

さらに2歳以下の男の子はすべて殺すとのヘロデ王の命令を逃れてエジプトに逃げました。

イエスは難民の子でもあったのです。

イエスが語る言葉に多くの人たちが慰められ、励まされ、生きる力を持てたのは、イエスが人生のどん底を体験した人であったからです。

人生のどん底を知った人の言葉には、他の人を包んでくれるあたたかさや思いやり、ユーモアがあります。

聖書はそういう意味で、あらゆる人生相談や悩みに答えてくれるものなのです。

3学期、それぞれの学年の仕上げの時です。

私たちが聖書を開く時、そこにはその時に、つまり今は仕上げに必要な言葉が必ず書かれています。

冬の厳しい寒さの中、そして新型コロナウイルス問題が再び大きくなりそうな1月2月3月ですが、イエスの言葉を力にしながら共に過ごしていきましょう。

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