礼拝の話

2023/10/20 

10月16日(月) 聖書 マタイによる福音書 28章16~20節 校長 小西二巳夫

松居さんと小原さんいうギタリストの演奏を聴きに美術館ホールに行きました。

そしてリサイタル当日のパンフレットにある曲目を見ると、演奏の最後の曲がフィンランディアと記されていました。

フィンランディアはシベリウスという作曲家がオーケストラのために書いた交響詩です。

フィンランディアはフィンランドという国と人々のために書かれた曲です。

19世紀末、今から100数十年前、ロシア帝国はフィンランドを支配していました。

そしてフィンランド語を使うことや国の歴史を学ぶことを厳しく禁じました。

そうしたロシアの暴力的な支配からから独立するための抵抗運動が起こります。

交響詩フィンランディアはその頃に作られ、抵抗運動をする人たちや国民の支えと希望になります。

2年前にロシアがウクライナへの侵略を始めた時、フィンランドの首都ヘルシンキにあるロシア大使館には抗議のために大勢の人が集まりました。

その時に「フィンランディア賛歌」という曲が謳われました。

「フィンランディア賛歌」は交響詩フィンランディアのクライマックスで、合唱団がアカペラで歌います。

フィンランドの人たちはかつてロシアによって支配された歴史を思い出し、この曲を歌うことでロシアのウクライナへの軍事攻撃を許さないとの意思を示したのです。

そして、ウクライナの人たちにかつて同じような状況にあった自分たちが決して知らない顔をしない、私たちはあなたたちと共にいますとの励ましと希望のメッセージを、フィンランディア賛歌に込めて歌ったのです。

「フィンランディア賛歌」は先ほど歌った賛美歌532番「やすかれ、わがこころよ」です。

ということは私たちが賛美歌532番を少しでも大きな声で、そして心を込めて歌うことによって、ウクライナ、そしてパレスチナのハマスとイスラエル軍の双方の攻撃によって苦しみと悲しみの中に生きなければならない人たちに、そしてあちこちで起きている紛争の中に生きなければならない人たちに、少しでも心を寄せることになるのです。

フィンランディアは平和と希望のメッセージを持った曲です。

2本のギター、そして19本の自由に動く指とジストニアでうまく動かない1本の指によって奏でられる、作り出される音とその世界はまさに希望を語るものだったのです。

それは大編成のオーケストラが作り出す希望や励ましとは違う、2本のギターと12本の弦、4本の手と19本の自由に動く指とうまく動かない1本の指だからこそ表現できる希望であり励ましでした。

私の中に、フィンランディアの心がそっと響いてくる、そのように感じました。

そしてクライマックスのフィンランディア賛歌「やすかれ わがこころよ」が2本のギターによって奏でられ始めた時、私は思わず涙がこみ上げてきました。

十字架から復活したイエスは、これから決して楽ではない、様々な困難がある道を歩き始める弟子たちに言いました。

「わたしは世の終わりまで,いつもあなたがたと共にいる」。

松居さんの自由に動かない右手親指はギター奏者の松居さんにとってずっと一緒にいる十字架です。

でも、十字架のイエスが平和を作り出したように、松居さんは十字架である親指によって、他の人には出せないやさしく、悲しみを包み込むような音色を出すことができる、それを聴く一人ひとりを慰め、希望を与えることができるのだと、気づかされました。

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