清和女子中高等学校。創立113年の高知県の私立女子校。キリスト教主義の中高一貫校です。
2022/10/06
灰谷健次郎という作家の作品の1つに「だれも知らない」というタイトルの小説があります。
主人公はM養護学校の6年生、12歳の麻里子さんです。
麻里子さんは出産の時のことが原因で筋肉の力が他の人に比べて10分の1です。
それは、足を一歩踏み出すにも他の人より10倍の力が必要だということです。
小説「だれも知らない」は、麻里子さんが家からスクールバス乗り場までの200mを歩く様子を描いています。
ある朝、麻里子さんは200mを歩いている時に、ハチの群れを見つけました。
朝露を浴びたハチたちは体の中の水分を外に出して、飛び立とうとしていました。
虫が好きな麻里子さんには、ハチの様子がシャボン玉吹きをしているように見え、一緒に歩いているお母さんとニコッと笑顔を交わしました。
その時、何かあるのかと興味深そうに通学途中の小学生の男の子たちが寄ってきました。
麻里子さんが指さす先のハチを見ると、その中の1人が「なんやハチやないか」とつまらなさそうに言い、持っていた棒の先でヒョイとハチたちを突いたのです。
棒で突かれることは、ハチたちからすると敵から攻撃を受けたということです。
次の瞬間、ハチたちが一斉に大きな羽音を立てながら小学生たちに向かって行きました。
麻里子さんは小学生たちに声をかけましたが、彼らはそれを無視して叫びながら手足を振り回しながら逃げていきました。
小学生たちは、麻里子さんは何もできないと決めつけていました。
ハチたちが小学生たちに一斉に襲い掛かった時、麻里子さんは彼らには「アーアーウーウー」にしか聞こえなかったかもしれませんが、「体を低くして動かないように」と言ったのです。
麻里子さんはハチたちが動かないものを敵とは考えないことを知っていたのです。
知らないで済ますことが、自分に不幸にすることを、小説「だれも知らない」は教えてくれているのです。
知ろうせず決めつけで他の人を見る、それはその見方で自分を見ることなのです。
そうした見方をする人の表情は周りから見たら好ましいものではありません。
そうすると、今度は自分は嫌われていると思い込み悩むことになります。
そういう自分を変える一番の方法を教えてくれるのがイエスです。
イエスは今日の箇所で「自分を愛するように隣人を愛しなさい」と言いました。
隣人を愛するというのは知るということです。
知ることによって、人は人らしくなっていけるのです。
人が幼い時から学校に通い、教育を受けるのは、自分の周りのこと、社会や世界のこと、そして自分のことを知るためです。
清和では6月に学園祭を行いました。
SDGsの取り組みの一つとして、各クラスが販売を行い、その売り上げ5万円をアムネスティという団体に献金をしました。
今、世界のあちこちで多くの人がさまざま生きる権利を奪われています。
生きる権利を奪われた人が少しでもそれを取り戻すための活動をしているのが、アムネスティです。
そして、私たちもさまざまな形で、アムネスティの活動に参加できるのです。
この礼拝の後、それを生徒会がアピールしてくれます。
生徒会がアピールする活動に積極的に参加することが、隣人を愛すること、知ること、そして自分を本当の意味で大切にすることにつながります。