礼拝の話

2022/09/06 

9月5日(月) 聖書 ホセア書 2章20節 校長 小西二巳夫

最近話題になっている美術館が2つあります。

群馬県立美術館と徳島県鳴門市にある大塚国際美術館です。

2つの美術館の入館者が増えたのは所蔵している作品を見るためのです。

その作品とは「ゲルニカ」という絵です。

20世紀最大の画家・芸術家、パブロ・ピカソが1937年に描いた作品です。

そのゲルニカを大勢の人が今ぜひ見たいと思うようになったのは2月24日からです。

その日はロシア軍がウクライナに軍事攻撃を始めた日です。

首都キーウに限らず、小さな村も無差別に近い形で爆撃されたのです。

その様子を映像で見た外国のレポーター次のように言いました。

「ここはゲルニカでしょうか。私たちはいつの時代にいるのでしょうか」。

ゲルニカは地図でいうとスペイン北の地方にあるフランスに近い小さな村です。

1937年当時、スペインは内戦状態に、フランコ将軍の側についたヒトラーのナチスドイツはゲルニカに激しい爆撃を行いました。

そのために村は完全に破壊され、多くの一般市民が殺されたのです。

この爆撃は歴史上はじめて無差別爆撃でした。

当時フランスで生活をしていたスペイン出身のピカソはゲルニカのことを知り、怒り悲しみ、そして1か月以上、寝る間も惜しんで描いたのがゲルニカです。

激しい爆撃を受けた村の絵というと、建物などが破壊された風景を想像しますが、ピカソはゲルニカにそういうものを一切描きませんでした。

ピカソが大きなキャンバスに描いたのは、死んだ子どもを抱いて泣き叫ぶ女性、人間の男の顔を持った牝牛、折れた剣を握りしめて横たわる兵士、息も絶え絶えにもがき苦しむ馬、逃げ惑う女性などです。

ピカソはそれらを白と黒そして灰色で描きました。

ゲルニカにはピカソのメッセージがいくつも込められています。

権力者が軍事力で相手を攻撃した時、結局苦しむのは相手ではなく、ふつうに生きている人々であり、戦争には色はない、つまり明るい未来はない。

そして、ピカソがゲルニカに込めた最大のメッセージは「私たちが本当に戦う相手は戦争であり、戦争と戦うことをやめてはいけない」ということです。

戦争というのは、自分たちと立場の違う相手を、そして許せない相手を敵として、武力・軍事力で戦うことです。

戦争というのは相手や敵と戦う方法の一つと考えられています。

それに対して、ピカソは私たちが本当に戦う相手が、戦争そのものだと考えたのです。

私たちがやり続けなければならないのは、戦争をなくす戦いだと考えたのです。

この世界から戦争という暴力が、悪の連鎖がなくなる日まで、戦争がすべて廃止されるまで、自分はアート・芸術で戦争と戦うとの決意をゲルニカに込めたのです。

ゲルニカを最初に観た時、多くの人が目をそむけたくなります。

見たくないものを見せられるような気持ちになるからです。

絶望的な場面に気味が悪い、趣味が悪いと思うからです。

聖書にも、特に旧約聖書には人間の起こす戦争によって、たくさんの命が奪われ傷つき、憎しみ生まれるという、見たくない場面がたくさん出てきます。

そこにあるのは「今自分の目のまで起こっている現実から目をそらしてはならない。知らないふりを、関係ないとの態度をとってはいけない」との問いかけです。

この聖書の問いかけとピカソがゲルニカに込めたメッセージに応えるためにも、私たちは毎日の学校生活をきちんと過ごし、学ぶ姿勢を持った人になることが求められているのです。

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